5/2(土)まるでお岩さんのように

2020年5月 2日 Posted in 中野note
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↑稽古中のモニターはこんな感じです。

昨晩ご紹介したように今日は劇団員たちと『唐版 風の又三郎』2幕に
取り組みました。
1幕に比べて2幕は平易です。
あらかじめキャラクターや設定が出揃っているので、スイスイ進みます。
実際、分量としても、前後の幕の4分の3ほどです。

その最後の方で、毎回気になるこんなト書きとせりふがあります。

織部 バラの刺青だあ。(近づく)エリカさん。(その胸の血を飲む)
夜の男 (織部の髪をひっぱって)ちくしょうっ。高田の血を飲んだな。
    高田の血を!(髪がちぎれる程にひっぱる)

 織部、髪がちぎれてもその胸にすいついている。


後半2行の( )の中身とト書きに特に注目してください。
見事に髪の毛が抜けています。

上演する側にとってはなかなか無茶な設定ですが、
ここを読むたびに思い出される唐さんの話がありますので、
今日はこれを披露しましょう。


状況劇場を旗揚げしたばかりの二十代半ばの無名時代、
何とか頭角をあらわそうとしていた唐さんは
ある作戦を立てたそうです。

それは、当時、気鋭の映画監督として名を馳せていた大島渚監督に
役者として自分を売り込もうと考えてのことでした。
そのために若き唐さんは、
大島監督がしばしば現れるという新宿ゴールデン街のバーを突き止め、
実際に監督がいると見るや、そこで大立ち回りを演じ始めます。

つまり、友人と連れ立ってわざと派手なケンカをしてみせ、
監督の目に留まろうとしたわけです。

ところが、偽のケンカはだんだんエスカレート、
やがて二人は本気の取っ組み合いを展開します。
ついに唐さんは髪の毛を掴まれたまま、階段を転げ落ちたそうです。

あの時は頭の毛の半分が抜けた、と唐さんはおっしゃっていました。

ちなみにその友人とは、映画監督であり、
後にパレスチナに渡ることになった足立正生さんだそうです。

唐さんから伺った話ですから、虚実はどこまでも曖昧ですが、
後年『新宿泥棒日記』で大島作品への出演しを達成したことを
考えれば、作成は大成功と言えます。

もう一度くり返します。

その時、頭皮から半分の髪の毛が抜けたそうです。

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