11/23(祝月)現場入り15日目〜バラシとお別れの準備
千秋楽から一夜明け、一気呵成に舞台と劇場を解体。
組み上げる大変さに比べて、片付けの何と速いことか。
資材を仕分けながら、
ああ、この座組みも解散なのだという感慨が湧いてきました。
春に集まったメンバーでZOOM本読みを重ねました。
最終的に加わった気田睦さんとヒガシナオキの合流により座組みは完成。
よく稽古をし、よく作業をし、
みんなでお客さんを誘導して、総力戦で公演を築きました。
良いメンバー、申し分ない贅沢なメンバーでした。
ここで、劇団外から参加してくれた面々について、
改めて感謝とともにご紹介したいと思います。
【福田周平 珍腐 役(真ん中)】
劇団員の熊野が共演した縁で参加してくれました。
帝國探偵社のトリオの中で、もっとも生真面目で、
それが故に可笑しさのある珍腐を、生真面目に演じてくれました。
「唐作品はどうして前を向いて喋るんですか?」
という根源的な質問に応えてした
コインパーキングでの稽古が忘れられない。
福田君には「王様は裸だ!」と言ってのけるような大胆さがあって、
けっこう追い込まれた私は全身全霊でこの問いに答えることになりました。
2幕の「ゴツン!」といういささか無茶なせりふを実に巧みに言うのを、
私はいつも楽しみで舞台を観ていました。
【宮本悠我 電話できなかった自衛官(真ん中)】
横浜の劇団虹の素に所属する俳優です。まだ10代。
けれども実力は確かでパッションに溢れています。
3幕、熊野に絡んで職務への熱意を見せるシーンに
彼を送り出せることは、とても贅沢なことでした。
大道具の仕事もプロで、演じながら、
さりげなく舞台の仕掛けを起動させたりもしてくれました。
【小山祥平 喪章を付けた男(一番左)】
現役横浜国大生。後輩です。普段は映像製作をしている。
彼はノリがよくて、本領では無い演劇にいつも興味を持って
参加してくれます。おばあちゃん子であり、高齢者施設で
アルバイトしているからか、写真のシーンで老婆をあしらう
笑顔が堂に入っていました。2幕で高田を糾弾するせりふがどんどん
上手くなったけれど、俳優を目指しているわけでは無い彼の今後に
あの能力は役に立つ日が来るのだろうか。
【小林敏和 自衛官のリーダー(一番左)】
3幕でソーセージ片手に禿を追い詰める自衛官を演じた彼は、
本来ダンサーであり、映像の役者でもある。
さすが身体の仕上がりが違う偉丈夫であり、当然、動きがキレる。
唐十郎という存在に圧倒的な関心を持って、年明けにバーはる美を
訪ねてくれた。唐さんのせりふや複雑な段取りに四苦八苦したことも
あったけれど、興味を持てばニューヨークのハーレムにも乗り込む
突撃力で、せりふもものにしていった。
休憩時間、『特権的肉体論』についてトシトシと話していると
こちらまで学生時代のように熱くなってくる。
【ヒガシナオキ 淫腐(左から2番目)】
劇団を上手く辞めるのは難しく、戻ってくるのはさらに難しい。
それを体現してくれた人間性に、私は感謝と敬意を持っています。
社会人も経験し、しぶとく演劇を続けている彼は、
大人になった責任感や有能さ、演技と、あまり変わらないなあ
と感じられる表情を次々と見せてくれました。
ナイーブだった彼が、嬉々としてわざと贅肉を付けた身体を晒している
のを見ると、真の"プライド"とはこういうものだと納得する。
男の顔になったな。
【佐々木覚 高田三郎(右)】
『ジョン・シルバー』シリーズに引き続き、今回も参加してくれた
劇団820製作所の主演俳優。
普段は穏やかな佐々木君の表情、その彫りの深さにはどこか陰りがある。
だから、"死の青年"たる高田役をお願いした。
皆がこぞって自分について喋り、どんな奴だろうとお客さんに期待されて
出ていく愉しさを味わってもらえたと思う。
3幕でエリカが高田に後ろ髪ひかれるシーンを本番中も何度も稽古して、
これまでにない説得力を示してくれた。くれぐれも、普段は優しい人です。
【竹林佑介 宮沢先生(右)】
福田君と同じく、熊野と共演した縁で参加してくれました。
俳優らしい俳優。こちらのオーダーを受けて、作品のテーマの一つである
"変装"を次々に重ねるこの役をものにしてくれた。
演じわけにより優れてキャラクターを作るだけなく、
時には竹林君自身の声でせりふを自分のことばにして伝える術を一緒に探しました。
フィジカルが強く頼り甲斐があって、休憩時間には
内田光子さんのCDを聴くのに付き合ってくれた。どうもありがとう。
【丸山正吾 夜の男(真ん中)】
レギュラーメンバーとも云える役者です。みんなが彼を慕っている。
"変態"でなく"変態にならざるを得なかった"夜の男を一緒に追究しました。
2幕で伝説の男・樫村にビビりながら歯向かうところ、楽しみにしていました。
俳優がいかにも、このせりふを自分は好きなんだ、
この所作や場面を自分は好きなんだ、と全身で訴えながら演じる時に、
やっぱりお客さんも嬉しくなる。そういう役者です。
【気田睦 大学生(左)】
気田さんが「大学生」を受けて下さったことは、
今回の公演に起こった僥倖のひとつでした。
軍人家庭の末弟たる誇りと、厳格すぎる故の哀しさを生きてくれました。
他の共演者に送り続けてくれたエールや、
ダブルキャストによる稽古不足の不安に慄く新木とちろを辛抱強く
受け止めて下さった大きさに深謝します。どこかでこの恩を返さないと。
気田さんの小道具の捌き、リズムの作り方を、劇団員も見習って欲しい。
【鳳恵弥 桃子】
これまで桃子役に与えられてきた評価をどうしても覆したくて、
鳳さんの力を借りました。この役は夜の男に鉄槌を喰らわす重責だけでなく、
しっかりと織部に絡むんです。状況劇場作品はどうしてもヒロイン偏重で、
他の女性役に分量が裂かれない傾向にある。
けれど唐さんは、高田やエリカを中心とした三角関係の他に、
織部を中心とした三角関係も成立させたくてこの役を造形した、
それを体現しようと、鳳さんと一緒に目標を立てました。
3幕への振りとして、2幕までをちょっとコミカルにし過ぎた嫌いも
あるけれど、彼女の思い切りの良さに支えられました。
・・・とこう書いていると、だんだん感傷的になってしまう。
どうかまた一緒に仕事をしましょう!
最後に、千秋楽の直前にみんなで撮った写真を紹介します。
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