2/3(金)下北沢の唐組『赤い靴』より
2023年2月 3日 Posted in 中野note
↑私が撮り忘れたので、重村大介が写真を送ってくれました。今日も頑張れ!
女性二人による少女誘拐事件に端を発して、彼らに犯行用の車両、
ハイラックスサーフを売ってしまった青年が取り憑かれたように
その事件の真相に迫る話です。
舞台にスクリーンが登場したり、奥行きなしでも演じられるようになっているのは、
この演目が渋谷の映画館ユーロスペースで初演されたためです。
林海象監督の『海ほおずき』に主演した唐さんは、その上映と並演するために
この『赤い靴』を書きました。1996年のこと。
新人公演と銘打った出演陣の中には、ずっと応援してきたメンバーもいるし、
新たに加わった人たちもいて、 多士済々でした。。
全体に、みんながいきなり主役級を張って肩に力が入っていたけれど、
それも誰もが通る道で、観ていて気持ち良い。
唐さんの役柄を演じるのは、
共感や感情移入といったリアリズムを持ちつつ、それをズラすのがコツだと思う。
与えられたせりふや役柄によってそのバランスは異なり、空間によっても
適切なバランスは変わる。
テントよりも劇場でやる方が、ちょっとリアリズム寄りに寄せてみよう、とか、
今の自分だったらそんな風に組み立てるけれど、それには経験も必要です。
皆さんには、こうした実演の上手くいった部分を頼りに、
偉大な先輩方の表面的な喋り方、演じ方の真似に終わらず、
自分の素直な生活感覚で役をとらえて、そこから唐さん流にジャンプする術を
やはり自分流で見つけていって欲しいと思いました。
昨晩より今日、今日より明日が良くなっていくだろうから、もう一回観たい、
そう思わせる舞台です。
一方で、舞台を観終わって帰りながら、
これまで接してきた様々な上演を思い出しました。
私は初演には間に合わなかったけれど、大学に入って唐さんに入門してから、
山中湖乞食城での新人発表や赤レンガ倉庫での公演、中央線沿線の小劇場、
唐組アトリエ......、さまざまな上演を観て来ました。
だから、それぞれの舞台で活躍して来た歴代のキャストが自分を駆け抜けました。
また、2009-2011年に室井先生を中心に運営された馬車道の北仲スクールでも
学生たちが久保井研さん演出によりこの演目を演じていて、その記憶も蘇りました。
その時、主人公の一人「韋駄天あやめ」を演じていた元学生のSさんが
昨日の回を観に来ていて、帰りに井の頭線の中で思い出話と近況を交換しながら
彼女が衣裳のワンピースを着ていた物腰、1幕の終わりで「カーレン!」と言った声を
まざまざと思い出しました。
あの時のメンバーはみんな社会に出て活躍しているそうです。
そうそう。室井先生によれば、
唐さんが横浜国立大学の教授になるかどうか逡巡していた際、
その回答をもらったのは、初演の舞台上でのことだったそうです。
まだ40代だった室井先生が舞台を観にいった時、
唐さんはそれまでとは違った演じ方をしてみせて、舞台上から回答をした。
それを受け取った室井さんが終演後に唐さんに応答することで、
教授就任が決まったのだそうです。
(ということは、室井さんが唐さんのメッセージをキャッチしなければ、
自分は唐さんのもとで学べなかった)
昨晩、主人公の灰田瞬一がスクリーンを切り裂いた場面を思い出しながら、
そんな風に翌日、今この瞬間も鑑賞しつづけています。
昨日、熱演してくれた皆さんに感謝。
トラックバック (0)
- トラックバックURL:
コメントする
(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)