12/4(金)祠(ほこら)の時間①
2020年12月 4日 Posted in 中野note
教授時代。2004.4.25。海辺で行った『ジョン・シルバー』公演
千秋楽の冒頭に立つ唐さん。
私は冬が近づくと、特に集中して台本を読みたくなります。
それには、私が師事し始めて以降の唐さんが、
よく11月に新作を執筆されていたことが影響しているように思います。
唐さんはこの時期をいつも、
「祠(ほこら)の時間」と呼ばれていました。
つまり、自分の内に篭って気を練り、
これからの指針を立てる時間にしようと云うわけです。
つまるところ、翌年の春に公演する作品を書き、公演を構想すべし。
学生時代から、私たちの秋公演本番は、
だいたい10月末から11月上旬に集中していました。
9月末から10月にかけて唐組紅テントが公演を終えると、
バトンを受け取るようなタイミングで私たちは公演してきました。
学生時分は全日、教授職を退かれてからも、
初日・中日・楽日という具合に唐さんは公演に立ち会って
くださいましたが、この時期の唐さんはいつもより緊張感があり、
あの大きな瞳が、ちょっとギラギラして感じられました。
あ、執筆をされているな、と私は思ったものです。
そういう時期は、いつも饒舌な唐さんが、しばしば宙空を見つめながら
「今は黙っているべきだ」というオーラを漂わせていました。
それから少しすると、「1幕」とか、
あるまとまった部分まで書き進めて感触を得ると、
今書いている芝居のモチーフや面白い場面について
お話をしてくださったものです。
唐さんが繰り広げる執筆中の芝居の話はすこぶる面白い。
しかしどこかで、唐さんはこちらの反応を伺いながら、
台本の出来をさぐっていたようにも感じられました。
そういうわけで、伺いながらやっぱり緊張したものです。
年末までに新作を書かなければならない、
いつも唐さんはそうおっしゃっていました。 〜つづく〜
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