12/16(月)狂わせたいの

2019年12月16日 Posted in 中野note
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↑「聖橋」は「ひじりばし」でなく「ひじりはし」が正しいと知りました。


今、ちょっとくたびれています。
とにかく移動が続き、この週末だけで何回も都内に出て、
千葉、綾瀬、小田原、葉山へと行きもしました。

そんな時は頭が痺れ、過去に体験した無意味な記憶がふと蘇ったりします。

「無意味」というのは怖ろしいもので、
「無意味」だから脳みそが処理できない。
結果、妙に印象に残ったりする。
それが時折り、何の脈絡もなく息を吹き返すのです。

唐さんという人は、
そういう無意味なものを捉える能力が突出して冴えている人でもあります。


今日、思い出したのはこんなことです。

あれは2003年の演劇賞を総ナメにした『泥人魚』公演でのこと、
幕開けは、客席の下手横幕が落ち、
唐さん扮するマダラボケの詩人「伊藤静雄」が自転車で疾走する場面でした。
場内は、いきなり唐十郎の登場に拍手喝采。

で、問題はここからなのですが。
その時、唐さんを走って追いかける女性が二人いるのです。
一人は、近藤結宥花さん演ずるヘルパーの「腰田さん」。
もう一人は、「腰田さんの助手」を劇団の新人さんが演じていました。

何回かこの芝居を観に通った時、私は妙なことに気づきました。
評判を呼んだ芝居だけあり、場内は日を追うごとに満員、
私は、たまたま唐さんが登場する客席の一番下手に座ったのです。
すると、唐さんを必死で追いかける「助手さん」が、
何やらパクパク口を開けながら走っている。

喝采する客席のなかでよく聴き分けてみると、それはこんな具合でした。
「♪ぼやぼやしてたら私は誰かの いいこになっちゃうよ〜」


あの時、なぜ彼女が山本リンダを歌っていたのか、いまだに分かりません。
劇の内容やシチュエーションとは、どう考えても関係ない。
『泥人魚』とあの歌詞をどうひっくり返しても、関連が見えない。
しかし、彼女は全力で、必死で歌っていました。
今日、何故あの場面を思い出してしまったのかも全く分かりません。
が、いざ思い出してみると気になって仕方がない。

私は基本的に、全てを分かりたいと思って台本を読み、芝居をつくります。
けれども、「無意味」がどれだけ魅力的かも、知っています。
全てを分かり尽くそうとすること、
その果てに「無意味」の魅力に出会うことが、私の目標です。

助手さんは、なぜあの歌を歌っていたのでしょうか?

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