5/26(金)おもしろいのは"使者"
2023年5月26日 Posted in 中野note
↑高橋睦郎の修辞では「女怪」と表されるスフィンクスと私
去年はロンドンで孤独だったのでずいぶん時間があり
3本どころではなく、『腰巻おぼろ 妖鯨篇』や『下町ホフマン』も
含めて6本研究することができました。
研究とは、パソコンで書かれていることを丸写ししながら
読むことです。ひと言ひと言に気をつけながら洞察し
同時に台本をデータ化して使いやすくします。
『鐵假面』稽古が本格化する前に研究しているのは
『オイディプス王』です。最近出たギリシャ悲劇の本を読んで
いっぺんやってみようと思ったのです。
翻訳にはこだわりがあり、高橋睦郎さんが修辞したものが相手です。
これは蜷川幸雄さんが築地本願寺で上演した時に作られた台本ですが、
単行本に収めたものがかつて売っていました。
私はそれを、大学受験の前の晩に新宿紀伊國屋で買ったのです。
ずっとお店の棚にあって汚れていたけれど、紛れもなく新刊本でした。
よく読んでみると、特におもしろいと感じたのは「使者」役です。
オイディプス王が自らの出自や運命を自覚し始めたあたりで
登場する使者は、王に父親たる隣国の王が亡くなったことを知らせます。
そして、まだまだ警戒心を解かないオイディプスを慰めようとして
かえって真実を明るみに出してしまう。
真実を伝えたらご褒美ください、というようなおねだりぜりふも
あって、相当なお調子者です。そして結果的に地雷を踏んでしまう。
この様子はゾクゾクします。空気の読めないマヌケな男が
自覚なく周囲を地獄に叩き落とす。
このやらかしっぷりに自分は好感を持ちました。
『オイディプス王』でどの役をやりたいか、
どの役が面白いかと問われたら、私は「使者」と答えます。
↓大学受験の時に買った小沢書店の高橋睦郎修辞『オイディプス王』
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