1/25(月)劇と子育て②
2021年1月25日 Posted in 中野note
『少女都市からの呼び声』を観て、
雪子を演じた美仁音は良い女優さんになったと思いました。
福本雄樹君という優れた相手役にも恵まれて、心からそう思いました。
私が唐さんに出会って22年経ちますから、
彼女とは小学校中学年くらいの頃からの知り合いです。
小さい頃からバレエで鍛えたために身体がしなやかで強く、
気さくでユーモラスな人です。
父親である唐さんの作品に対しては真面目すぎるほど真面目、
それでいて、真剣に演じるべきところと、くだけてコミカルに
演じるところの切り分けは、デビューした頃から見事でした。
シリアスと笑いとは一色に染まることなく
すぐ隣にあって、それが交互に入れ替わることで、
時に笑いが哀しみを帯び、深刻さが喜劇を呼ぶという奥義を
あらかじめ体得しているかのよう。この辺はやはり血のなせる技で、
自分などはそういう感覚を得るために10年はかかったと思います。
話は変わりますが、
唐組が1993年代に初演した『桃太郎の母』という芝居があります。
留学した台湾で事件に巻き込まれ、亡くなってしまった女学生が
お母さんに残したダイングメッセージを、探偵・灰田(はいだ)が
解き明かす物語です。
私がこの芝居を初めて観たのは、2011年の冬。
久保井研さん演出により横浜国大の学生たちが演じた公演でした。
その時、劇の内容に感激すると同時に、私にはピンとくるものがありました。
すぐに気になって美仁音に訊いたところ、彼女は1991年生まれだそうでした。
きっと唐さんは、
まだ乳飲み子の彼女をお世話しながら『桃太郎の母』を書いたはずです。
『腰巻お仙』シリーズに代表されるように、少年が母を求める物語を
書いてきた唐さんが、初めて、女の子がお母さんを想う作品を
描いたのだと確信しました。
「娘が生まれて卑猥語が書きにくくなった」
なんて言っていた唐さんですが、『桃太郎〜』には、
女の子の父となった感慨が溢れているように感じます。
インスピレーションの源に違いない美仁音に、
いつか『桃太郎の母』のヒロインを演じてもらいたいと期待します。
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