9/14(月)安保さんに捧ぐ①

2020年9月14日 Posted in 中野note
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↑2011年に行った『唐十郎 21世紀リサイタル』に出てくださった、
一番右側が安保さん。真ん中に唐さんと、左にセコンドの私。

今週末、9月20日は、
『唐版 風の又三郎』の劇中歌を作曲された安保由夫さんの御命日です。
そこで、今日から何日間かは安保さんに思いを馳せながら弔意を新たにし、
現在の稽古への活力にしたいと思います。


安保さんは恩人の一人です。
それも困った時に、いつも静かに手を差し伸べ、
知恵を授けて下さった恩人でした。

唐十郎門下となった20歳前後の自分にとって、
唐さんの周りに集まっている面々はかなり恐ろし気に見えました。

遠巻きに眺めていた大久保鷹さん、四谷シモンさん、緑魔子さん、
石橋蓮司さんは言うに及ばず、金守珍さんも渡辺えりさんも
おっかなくて仕方がない。

後に親しくなる唐組や新宿梁山泊の面々も
押し並べて強面に見えたくらいでしたから、先にあげたような、
状況劇場時代から唐さんと付き合いのある方々ともなれば尚更です。
当然、安保さんもその中のお一人でした。

そんな安保さんと初めて本格的な関わりが生じたのは、
2006年秋に『ユニコン物語 溶ける角篇』に挑んだ時です。

それまでに手掛けた作品の劇中歌は、安保さん作曲ではありませんでした。

『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』『ジョン・シルバー』
『少女都市からの呼び声』は小室等さん。
『鉛の心臓』『黒いチューリップ』『お化け煙突物語』は猪俣公章さん。
『盲導犬』は田山雅充さん。
『動物園が消える日』と『錬夢術』はオリジナルをこちらで作曲。
という具合です。

それはただの偶然だったのですが、
同時に、安保さんが唐さんに深く関わった70年代の状況劇場作品に
唐ゼミが挑むようになったことを意味します。

そのようなわけで、私は安保さんのお店を訪ねることになったのです。
新宿にある「NADJA(ナジャ)」というバー。

今にして思えば、背後に唐さんもいらっしゃる私の平身低頭を
安保さんが受けないわけはないのですが、緊張しながら電話でお願いをし、
後日、安保さんが用意してくださった劇中歌のテープを受け取りに、
いかにも重そうな扉の前に立ちました。

土台、酒の飲めない私はバーや居酒屋に慣れていません。
呑めないので、テープを受け取るのがやっと。
就職試験でも受けるようにドアのノックし、挨拶し、御礼を伝える。
テープを頂戴して辞するまでの時間はだいたい2分そこそこ。
"いたたまれない"とはこのことでした。

飛んで帰るなり再生したコミックソング『八房(やつふさ)の唄』。
安保さんの歌う前奏の ♪ブンガチャカ ブンガチャカ〜 が
緊張の余韻でまったく笑えなかったことを、よく覚えています。

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