2/8(土)アイディアの源泉

2020年2月 9日 Posted in 中野note
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↑イスラム教圏ではポピュラーなお守り「ファーティマの手」。
引き出しを整理していたら、こんなものも出てきました。

イスラム教圏では、「見る・見られる」という行為が、
すごく強い威力を持っているらしいのです。

肌の露出を嫌う土地柄ですから、
全身を包む衣類から覗く目線・視線の類が強力になる。
「イビルアイ=邪視・邪眼」という言葉もあるように、
よこしまな目でジロジロと見つめられることは、
ひとつの呪いを受けたり、犯されるも同然、という考え方のようです。

そういう邪悪な眼差しから身を守るために、このお守りがあるのだそうです。
手のひらの中に、邪視を跳ね返す聖なる目が埋め込まれている。
ちなみに「ファーティマ」とはマホメットの娘、
イスラム教における聖女の名前です。

2011年に『海の牙-黒髪海峡篇』に取り組んでいた時、
このお守りの存在に気づいて、全ての謎が解けました。

あの物語は、こんな具合です。

青年・呉一郎は中学生時代、
体育の時間に得意の鉄棒で大車輪を披露していたところ、
校舎の窓からとんでもなく強い目線が自分を射抜いていることに気づく。
瞬間、一郎の身は硬直して鉄棒から転げ落ち、
それ以来、右手が使い物にならなくなってしまう。

舞台は、その目線の持ち主であるヒロイン・瀬良皿子と、
(「シェラザード」をもじったセラサラコ)
呉一郎が再開するところから始まります。

この、大車輪中の刹那から二人の因縁がスタートするところが、
例によって唐さん節炸裂でなかなかの傑作なのですが、
この「目」と「手」を取り合わせたオブジェこそ、
「ファーティマの手」でした。

『海の牙』は1973年の秋に初演、
春に唐さんたちはバングラデシュ公演を行っています。
ここはイスラム教圏ですから、
きっと街のそこここでこのお守りを見た唐さんは、
物語の着想を得たに違いありません。

『海の牙』は私たち、けっこう自信あります。
またやってみたい演目のひとつです。

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