5/26(水)ここにあの人がいた!

2021年5月26日 Posted in 中野note
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↑たまには過ごすエレガントなひととき。

先日、鎌倉文学館に行ってきました。
トンネルを抜けた先にある謎めいた洋館。
今は、バラの咲き誇るお庭。

同じ場所を目指す着物姿の妙齢の女性たちを横目に見ながら、
なんとなく場違いなようにも思いましたが、
企画展「作家のきもち」には、そんな気おくれを吹き飛ばす異様な
吸引力がありました。

これは、普段は作家の草稿などを展示している流れの中では
なかなかに思い切った展示で、むしろ作家がプライベートに
書いた(時に書き散らした)ハガキや手紙の中に、その時々の
真情を推し量ろうという企画でした。

20歳の三島由紀夫さんが上昇志向をむき出しにした
いささか俗人的な熱血漢ぶりをあらわにしていたり、
大家である夏目漱石が、無作法な編集者に手を焼く新進作家に
きめ細やかかつ実際的なアドバイスをしたり。

最悪の初対面ののちに盟友的な交流を結んだ
萩原朔太郎が室生犀星に、書簡の中で謎めいた言辞を送ったり。
私が想定していた滞在時間1時間ではとても足りない充実の内容でした。

写真は、バラの花咲く庭園から文学館を撮影したもの。
この建物、古くは加賀百万石の前田家が近代になって構えた邸宅、
昭和になってからは、政界の團十郎こと佐藤栄作元首相が
別宅とした場所でもあったそうです。

聞けば、この最上階でのテラスで、そこから臨む由比ヶ浜の眺望に
向かって、佐藤さんは演説の練習をしていたとか。
佐藤さんが自らのなまりを気にされていたことは有名ですが、
確か彼のイントネーション指南は、若かりじ日の浅利慶太さんが行って
いたと聞きました。ということは、あのテラスには浅利さんもいたように
思えてなりません。

だとすれば、きっとこの場所で浅利さんはアヌイやシロドゥにも
思いを馳せていたに違いない。ジロドゥの『間奏曲』が似合いそう。
そんなことを考えながら、私も少し別世界を味わいました。

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