10/23(土)カーテンコール〜ちろ・荒牧咲哉

2021年10月24日 Posted in 中野note
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今日は三ノ輪に行き、上野にも寄りました。
公演直前に寿命を迎えてしまった車の、廃車手続きのためです。
サネヨシと二人で行き、せっかく台東区まで来たのだからと、
上野公園のクジラを見ました。

ちょうど銀杏に匂いも強烈にする。
明日から始まるワークショップで『少女仮面』に取り組み
その次には『吸血姫』に進みます。

『吸血姫』には、上野の森の銀杏について語るくだりがあり、
良い体験をしました。

さて、今日のカーテンコールは劇団員のちろと荒牧咲哉くんです。

☆ちろ
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昨日、紹介した渡辺くんの「大学生」と常にペアで行動する
「老婆」と、三幕では日替わりで「尼」のリーダーを演じました。
特に、去年から取り組んできた「老婆」が課題でした。
彼女は重要な役割を劇の前半で担います。

乗り逃げにより死んでしまった高田三郎の
残した遺族として生活に困窮していたところ、青年に化けたエリカと
生活保護をもらいに行く旅に出ることになった。
これが物語全体の始まりでもある。

ところが、やっと帝國探偵社に辿り着き、
「教授」と青年の会話を聞くにつけ、生活保護の取得が望み薄だと知る。
どうもこの青年に自分は騙されているのではないか。
疑いが芽生え、「又三郎」と呼ばれる青年が実は女であることを
老婆が暴露すると、物語は一気に加速します。

老婆役なのに、フィジカルが求められます。
初めは哀れっぽく大学生とともにいるのですが、
孫の背に飛び乗るアクションや、暴露のタンカ口上も求められる。

ちろさんは、ある程度年齢がいってから、
不調の時期の唐ゼミ☆を観て入団してきました。
それまで、角替和枝さんのもとで役者に取り組んできたのだそうです。

2017-2018年、テント公演もできず、
自分たちに何ができ、これからどうすれば良いのか
試行錯誤していた時期に味方に加わったちろさんと佐々木あかりは、
当時の私や劇団員を大いに励ましてくれました。

そして今回。
唐ゼミ☆が重視するせりふの意味を汲み取るやり方を覚え、
昨年より格段に大きくなった声量と決めぜりふのアタックの強さで、
劇を支えた。

終幕、「犬」になり、渡辺くんと一緒に丸山正吾に鞭でしばかれる
ところは笑ってしまう。女性なのにお客に引かれず、笑いを呼ぶ。
自分たちを「チクショー」というせりふで笑いもとった。
頭と身体が、唐十郎のせりふを乗りこなせるようになってきた証拠です。


☆荒牧咲哉(あらまき さくや)
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荒牧くんには、色々と活躍してもらいました。
冒頭の「小学生」にはじまり、葬列の「霧三郎」、
二幕の航空兵、そして三幕では、御茶ノ水に駈け込んでくる自衛隊員。

荒牧くんとは、今年の初夏に外部演出した『シーボルト父子伝』で
知り合いました。俳優・声優・お笑いの演者であり構成作家でもある
IKKANさん率いるオフィス怪人社の俳優部に所属して数ヶ月という
若手俳優です。

もともと「忍者ショー」をやっていたとも云います。
そのために、声も表情も優しい荒牧くんは、鍛え上げられた身体を持ち、
当然ながらアクションや殺陣ができる。
見た目は小柄なのですが、身鍛え上げられている身体がぶ厚い。
Tシャツの下に異様なパワーを感じる。
そのアンバランスな様子が、彼の魅力です。

『シーボルト父子伝』が上演された築地で劇を支えてもらいながら、
延長戦はフィジカルが強いメンバーでいきたいと切望していた私は、
引き続き荒牧くんのパワーとキレを借りることができました。

遅れて稽古に合流した荒牧くんには、合い間に、
努めて『唐版 風の又三郎』の構造やせりふの意味、
唐さんがどういう作家で、どんな芝居をつくってきたかを話しました。
そうすることで、全体に理解を促すことになるとも思いましたし、
本番が近づけば近づくほど、舞台に立つことを愉しめるようになるだろう
と考えました。

とにかくシーンを完成させてしまわなければ、という焦りもありましたが、
急がば回れ。それに、荒牧くんには、木刀や模擬刀を扱うように、
役割やせりふを使いこなしてもらいたかった。

冒頭の小学生では、調子に乗った優等生の喋りとスピードを両立させる。
葬列の霧三郎では、笑顔のご近所さんがいかに酷薄であるかを体現する。
色々なオーダーをこちらは出し、彼は応えてくれました。
航空兵も自衛官では、こちらが求める圧倒的なコンビネーションと
スピードを、持ち前の運動神経で安易とこなす。

それでいて、苦労したのは2幕の係累血統調査のくだり。
乗り逃げの高田三郎三曹を糾弾するせりふを滔々と述べたてるシーンでは、
自分の立場から意味を伝え、苦しむ相手の反応を捉えながら喋る必要がある。

この場面については、最後の最後まで工夫と挑戦を続けました。
表立ったミスではないものの、時には息が続かない日もある。
本番の緊張の中で冷静さを保ち、せりふの最後にまで呼吸を維持し、
せりふが相手に及ぼす影響を見届けるべく残心までをも全うする。

毎回が挑みかかるような本番で、公演前後は課題出しと工夫の連続でした。
そうして渡り合っている姿を端で見ていて、誘って良かったと心から思います。

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