唐さんは宝塚を観ていたのだろうか?

2019年10月31日 Posted in 中野note
今日は唐さんと宝塚歌劇の話題です。
唐十郎と宝塚といえば、
最近とみに上演される機会の多い『少女仮面』ですが、 
あれを書かれた時点で唐さんは宝塚をご覧になっていたのか、
これが謎です。 
 

ヒロインの名前は往年の大スター「春日野八千代」ですが、
 物語が進むとだんだん、彼女が真っ赤な偽物だと知れてくる。 
女優志望の少女・貝が春日野に入門しようとするところから舞台が始まり、 
やがては貝のまっすぐな視線が、宝塚スターを騙る女の正体を暴いてしまう、
というストーリーです。 
 

来年でめでたく御年80歳を迎え、
半世紀を超えるキャリアを誇る唐さんのことですから、 
現在では必ずやご覧になっているに違いありませんが、
少なくとも私がご本人から宝塚の観劇談を伺ったことがないことに、
はたと気付きました。 
執筆に当たられていた27~28歳当時の唐さんは、
どうだったのでしょうか。 


 一方、確かにあの作品には宝塚の"要素"は出てきます。
 例えば1場の最後、
ようやく登場したヒロイン・春日野八千代が入ろうとするお風呂があります。
あれは、ファンの少女たちの涙を溜めて沸かしてある、という怖ろしいお風呂ですが、 
宝塚の創立が、宝塚温泉に新設した温水プールが経営的に立ち行かず、 
そのプールの上に蓋をして、それを舞台にして『桃太郎』を演じたのに由来する。
 そういうところから来ています。 
 

それに、あのファンの少女たちの恐ろしさですね。 
一昨年、
若葉町にアートスペースを構える佐藤信さんをゲストに
大学生向けの講座を行いましたが、 
何かの拍子に宝塚歌劇団が話題になり、
あの卒業というシステム、ファンの人たちが宝塚スターの青春を愛する制度は、
考えようによっては怖い、という趣旨のことをとおっしゃっていました。 
同じような恐怖と残酷を唐さんは、
少女たちが舞台上の春日野から衣装や肉体の片鱗を引き千切るようにして奪い、
保管しているという設定に込めていると思います。  


最近では早川書房が新刊で
『少女仮面』収録の文庫本を出版してくれました。 嬉しいことです。
 それ以前は、70年代に角川文庫から出版されていたのを古本屋で見かけると、
値段が高くない限りついつい買ってしまい、
本棚が溢れると劇団員に渡していました。 
この角川文庫版には、先月に唐ゼミ☆が 上演した
『ジョン・シルバー』も収められていますから、愛してやみません。 
 


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『少女仮面』。
自分たちはまだ上演したことのない作品ですが、話が尽きないですね。
明日も続きをやりましょう!

(劇団唐ゼミ☆代表 中野敦之)



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