12/14(月)祠(ほこら)の時間⑥
2020年12月14日 Posted in 中野note
↑私が頂いた『木馬の鼻』原稿より。唐さんの肉筆は繊細。
執筆時期には飲酒を控え、朝5時台に書斎に入り、
長ければお昼くらいまで原稿に向かうのだと唐さんは仰っていました。
道具はブルーブラックの万年筆。
私が出会ってからの唐さんが新作を書かれるのは、
唐組の秋公演が終わった11月から年末にかけて。
年末に劇団員が帰省する時までに新作を渡したい。
そう唐さんは仰っていました。
台本こそ、劇団員の指針となる地図。
団員たちが常に目標を持っていられるよう、
そこには、座長としての配慮や願いがあったように思います。
唐さんに限ったことでは無いと思いますが、
劇作家は、そうして原稿を現場に"託す"のです。
ところで、専ら書斎をベースとする唐さんが、
家の外に出掛けられて執筆されていたことがあります。
その時は、朝からわざわざ自転車に乗り、
ご自宅から少し離れたところにある駅前のドトールコーヒーに
通われていたそうです。
唐さん曰く、
早朝に忙しなく行き来するお客たちがコーヒーをすすり、
会話している内容に聞き耳を立てていると、
インスピレーションが湧いてくるのだそうです。
完全にサイレントの空間より、
少し騒音があった方が捗るのは私にもわかる気がします、
が、それにしてもドトールとは。
懐にジャックナイフを忍ばせているような連中ばかりがいる。
そう唐さんは仰っていました。
・・・絶対にそんなことは無いと思いますが、
ドトールに集まる若いお客たちが唐さんにはそう見えたのだそうです。
刃の下を潜るような緊張の中、
張り詰めた唐さんが必死に執筆されているのを想像する時、
その度はずれな真剣さと、街場に分け入ってその空気を
吸収しようとする貪欲さに打たれつつも、
ちょっと可笑しくなってしまいます。
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