12/18(土)ポオと唐さん

2021年12月18日 Posted in 中野note
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仕事の合間に、久々にポオを読んでいます。
エドガー・アラン・ポオ(ポー)のことです。
あの『モルグ街の殺人』『黄金虫』で有名なポオ。

きっかけは、来月の渡英に備えて読むこと進められた
ビギナー向けの英語テキストに、ポオの特集があったことです。
むろん、原文そのままでなく平易にしたものをやっとこさ読んでいます。

すると、久しぶりに他の作品を読んでみたくなり、
『The Philosophy of Composition(詩の哲学、構成の原理など)』
という文章を初めて読みました。

大学一年生の時、
「メディア基礎論」という講義で室井先生がロマン主義について
話をされた際、ポオは全くロマンティックではなく、冷静な計算のもとに
有名な『大鴉』という詩を書いた、という意味のことを仰っていましたが、
その根拠がこの文章にあったのだと、二十数年を経て納得しました。

読むに手頃な100行を目指して書いたが、108行になってしまった、
というポオはちょっと露悪的に過ぎるようにも思いますが、
それでもやっぱり、アンチ・ロマンティックを標榜するポオは愉しい。

唐さんもまたポオが好きで、やはり学生時代に
『アッシャー家の崩壊』について話したのをよく覚えています。
唐さんの話はすごく面白くて、あの独特のテノールで
「アッシャー家!」という時の発語がいかにも唐十郎で、
それだけでニヤニヤした記憶があります。

それから、なんと言っても
『A Descent into the Maelstorom(メエルシュトレエムに呑まれて)』。
海上で恐ろしい渦巻きに飲み込まれてしまうのを、
樽の中に入って凌いだ男の話です。

唐さんはあの話の、一夜にして男の髪の毛が真っ白になってしまった
というエピソードが大好きで、90年代「カンテン堂シリーズ」の
主人公「灰田」は、あの作品からも影響を受けたのだそうです。

それまで、唐さんの主人公といえば「田口」が定番でしたが、
真っ白になった「田口」こそ「灰田」である、と。

イギリス行きを前に、学生時代に戻っていくような感慨でいます。

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