5/1(土)初めて観た!〜『おちょこの傘持つメリーポピンズ』
2021年5月 1日 Posted in 中野note
↑終演後に宮城聰さんと。
ふじのくにせかい演劇祭で上演されるSPACの
『おちょこの傘持つメリーポピンズ』初日に立ち会うためです。
学生時代から、時間とお金の許す限り、
唐十郎作品の上演には駆けつけてきました。
まして今回の演目は、まだ実際に演じられるのを観たことがない
『おちょこの傘持つメリーポピンズ』。
これは絶対に見逃してはならない!と、西へ。
ゴールデンウィーク渋滞の心配をよそに、
どこにも渋滞がなく、たどり着くこと2時間10分。
途中からは他のお客さんを案内する観光バスの後ろにくっつき、
舞台芸術公園に行き着きました。
もうとにかく大雨でしたから、
新調した合羽と、善光寺の傘帽子を装着しました。
そうだ! この帽子は唐ゼミ☆長野公演で買ったもの、
その時の恩人である元ネオンホール支配人・小川哲郎さんが、
今日の舞台監督。公園内の茶畑の横を通り過ぎながら興奮し、
さらに強さを増す雨を受けながら「頑張れ!テツロウ!」と
思いました。
舞台が始まった瞬間、この時とばかりザーッと雨量が増して、
客席は笑いに包まれました。もう笑ってしまうしかない。
一方で、雨の音に負けじと、SPACの鍛え上げられた役者たちが
せりふ届けよ!とばかりに気を吐きました。
こっちも一生懸命に聴く。
そこから2時間。良い芝居でした。
雨だったから良かった、とか、これぞ野外劇の醍醐味だ!
という気合いやイベント性を超えて、すごくクリアに物語と情感が
伝わってきました。当たり前といえば当たり前ですが、
この当たり前の実現がなかなか難しい。稀有なことです。
森進一に捨てられた女性「カナ」と、
彼女の運命に心を痛めて芸能界を去った元マネージャー「檜垣」、
さらに彼女を慕う、傘職人「おちょこ」の物語です。
現在だと、世間は捨てられた「カナ」の味方をして、
あるいは捨てた男を糾弾する風潮にありますが、
当時は圧倒的に黙殺されてしまった彼女の素性が明らかになり、
やがてもう一度、カナは保健所員たちの手によってバイ菌扱い。
連れていかれます。
社会の隅にいる人が、その隅っこからも弾き出されるという、
なんともいたたまれない話でした。
でも、唐さんの芝居を貫く明るさ・バカバカしさと、
SPACキャスト陣の躍動感が、マイナーな物語を包み込んでいました。
演出の宮城聰さんは、感染予防のため、
まるでラシーヌ劇のように前を向いた発語を心がけたそうなのですが、
この方法が、圧倒的に唐さんのせりふと合っていました。
広いステージのセンターにいる登場人物たちを
階段席から見下ろすという劇場機構も相まって、凄く効果を上げていた。
ことば、ことば、ことば、ですから。
ああ、唐さんの劇は、四畳半のギリシャ悲劇なのだと思いました。
単純明快、原初の演劇の威力を体感できる舞台でした。
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