12/30(月)ここから三週間で

2019年12月30日 Posted in 中野note
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白川静先生の絵本です。大人の絵本とはまさにこのこと。

さあ、お待ちかね。台本研究の時間が始まりました。
今日から三週間みっちりやります。

何をするかというと、上演台本を作ります。
唐さんの戯曲集から狙いの戯曲を取り出して、タイピングするのです。

元々、上演台本づくりは劇団員で分担してやっていたのですが、
いつの頃からか、私一人でやるようになりました。

理由はいつくかありますが、何より大きいのは、
一人でタイピングするのが、一番手っ取り早く台本を読む方法だからです。

自分はどちらか言えば、要領が良い方だと思います。
例えば、初見の台本を朗読すると、人よりかなりよく読めます。
声に出して読んでいる数行先を、目で追うことが出来るからです。

一方でこれは弱点でもあり、要するに、細部を読み飛ばしやすいのです。
往々にして、大局は捉えられても、役柄の機微やティテールの面白さを、
汲み取り損ねる危険性があります。
そこで、一人でタイピングするようになり、
結果として、いくつもの効能を実感しています。

例えば、
それまで自分のことを「私」と言っていた女性の登場人物が、
ある時、固有名詞で自分を呼び始めるとします。
これは場合によって、相手役に対してこの女性がしなだれかかる瞬間です。
そこで、演技の上でこれを汲み取り、固有名詞で呼び始める時には、
相手役にグッと接近してみよう、などと試行錯誤が始まるわけです。

コツコツとタイピングしていると、こういう瞬間を見逃さずに済みます。
まことに単純な作業ですが、効果絶大。

こういうやり方には何人かお手本がいて、
最大の巨人は、私が折に触れて読む白川静先生です。
「碩学」という言葉はこの方のためにある、
と言いたくなる古代文字研究の大家ですが、
この白川先生が文字を読み解く際の手法が実に単純で、
ひたすらガリガリとトレースするんだそうです。

線の太さ、曲線の曲がり方などを愚直に再現しながら、
全身で古代人に接近し、一つ一つの文字を読み解いていったと言います。
そこで私も、一字一字カタカタやりながら、
唐さんに狙いを定めているわけです。

本当は白川先生のように手書きが最も良いのでしょうが、
そこはサボってパソコンを使います。

よく読めて、気づけば上演台本まで完成する。まさに一石二鳥です。

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