7/16(金)好きなせりふを言ってみて②

2021年7月16日 Posted in 中野note
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↑車座で宴会やっている写真を探したらこんなものが出てきた。
2011.11に赤レンガ倉庫でやった21世紀リサイタルの打ち上げ
ムシロを敷いて、もちろんこれも手作り!

大学に入学するとすぐに、唐さんの授業を受けました。
そして、研究室を訪ねた。たいそう緊張しましたが、
自分は唐さんに教えを乞うために大学に進んだのです。
意を決してドアを叩きました。

しかし、ありったけの知識を振り絞っても
唐さんとの会話は10分ほどしか保ちません。
自分は緊張しすぎており、早々に引き上げることになりました。

けれども、以降の唐さんは自分を気遣ってくださるようになり、
テントの片付けを手伝いに来ないかと誘ってくださいました。
確か1999年6月だったと記憶しています。
日曜まで公演した紅テントをバラすのですから、月曜日のこと。
この日、私は初めて大学をサボりました。

授業よりも、大学に入ったおおもとの目標を優先するのは当然でしたが、
やはり勇気が要りました。自分は詩に疎いだけでなく、授業をサボることに
後ろめたさを感じる、普通の青年でした。

手伝いに行って、いろいろなことを劇団員の人たちに教わり、
見様見真似で働きました。ハングリーで、優しい方たちでした。

こんなことががあって、
唐さんは春公演全体の打ち上げにも誘って下さいました。
それで、下井草にお邪魔することになったのです。

唐組の打ち上げにお邪魔して驚いたのは、
すべてが手作りだということでした。

食べるものも炊き出しのように作ってあり、
自分たちでセッティングをして、みんなで宴会を張っていました。
居酒屋を利用する大学サークルの新歓コンパとは違うのです。

何より驚いたのは、宴会中の余興でした。
芝居の名シーンを再現してみせたり、
得意な人がギター伴奏をして劇中歌や好きな歌謡曲を歌い始める。

「あのせりふを言ってみて!」
そう唐さんがリクエストすると、
劇団員の人たちはたちどころにパフォーマンスしてみせる。
そして、そこで繰り広げられるせりふや歌詞を味わっていました。
稽古や本番はお客さんのために行うものが、
劇団の皆さんは全員、唐さんの言葉に惚れ込んで入団してきたのです。

その場は、そうした言葉の数々を繰り出しては、
自分たちのために味わい、楽しむ。そういう雰囲気でした。
なぜこの言葉が面白いか、口々に、時にはふざけたりもしながら
話が盛り上がっていました。

世の中にはこんな人たちがいる。
言葉に魅入られて、人生を賭けている人たちがいる。
何より、彼らを駆り立てる魔力が、研ぎ澄まされたせりふにはある。

そのようなことに気づかされた、それが最初でした。
鈍感だった自分は、こうして唐さんの世界に入門していったのです。

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