5/29(金)驚きのコストパフォーマンス

2020年5月29日 Posted in 中野note
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いま取り組んでいる『唐版 風の又三郎』には、
「岩波文庫の〇〇頁には〇〇〇〇と書いてある」
という意味のせりふが何度も出てきます。

普通、劇作家はわざわざ登場人物に
こんなことを喋らせないと思うのですが、これが唐さんなのです。
ご自身の几帳面さがよく顕れています。
で、実際に写真の文庫本をめくってみると、
その通りの頁に同じ言葉が書いてある。この圧倒的な律儀。
(約半世紀、岩波書店が文字をデカくしたりしていないからこそ判りました)

執筆時、文庫本を開きながら各部分をまめまめしく書き写した
唐さんを想像すると、どこかユーモラスでもあります。

『唐版 風の又三郎』の上演を目指すにあたり、
私はもちろん岩波文庫の『風の又三郎』を読んであったのですが、
先日、ちょっと調べたいことがあって久々にこれを取り出しました。
そこで目次を見て、思わず笑ってしまった。

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↑だってこれを見て下さい。
不覚にも今まで気づかなかったんですが、『風の又三郎』の次は、
『セロひきのゴーシュ』なんですよ。

どういうことかというと、唐さんは1974年春に『唐版 風の又三郎』で
大ヒットを飛ばした後、秋に『夜叉綺想』という作品を上演します。
この『夜叉綺想』の元ネタが『セロひきのゴーシュ』。
よりによって、短編集のひとつ後ろの作品をネタに次の芝居を構想する。
この思い切りの良さが実に唐さんです。

そしてさらに、この文庫に収められた最後の作品は、
『グスコーブドリの伝記』です。
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唐さんは後に、これをネタに『黄金バット(81年初演)』を書きました。

いいですか。
現在やっと740円+消費税のこの文庫本、
唐さんが買った時に幾らだったのかは分かりませんが、
とにかく、一冊の文庫本で3本も書いてしまった。

この生産性、経済効率のあまりの良さに、私は天を仰ぐばかりです。

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