6/9(水)咄嗟の判断

2021年6月 9日 Posted in 中野note
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この本『劇的痙攣(岩波書店)』に土方さんへの弔辞が収められています

これから始まるワークショップを前に、今は軽く精神統一。
そして、私の好きな、唐さんと土方巽さんのエピソードを一つ披露します。

土方巽さんがお亡くなりになった時、
唐さんは弔辞を読む際、最後に「魔王土方へ」と言葉を添えました。
魔王・・・。土方さんには、そう呼ばせる複雑な内面があったそうです。

前にこのゼミログに書いたように、
味噌汁の具への問いかけにも、答える人にアーティストたることを
求める威圧と緊張。
金粉ショーダンスのアルバイトを終えた唐さんたちに、
ミシンを質に入れてでもお酒を用意して労おうとする優しさ。
こんな具合です。

小説家志望でありながら暗黒舞踏の始祖となった土方さんの内面には
計り知れないところがあったそうです。
嫉妬心も、その一つ。

唐さんによれば、別荘にして倉庫、稽古場でもある「乞食城」を落成した時、
様々なお客さんを招いて大宴会を張ったそうです。
すると、そこにお招きしていた土方さんが怒り始めた。

どうやら、唐さんが澁澤龍彦さんとばかり親しく話していたのが
気に入らなかったらしい。お酒のまわった宴席でのこと、
土方さんは「オレと渋澤とどっちが大事なんだ?」と唐さんに
すごんだのだそうです。

そこで唐さんはどうしたか。唐さんは瞬時に、
「あんたに決まってるだろ!」と言って土方さんを殴ったのだそうです。

・・・恐るべき咄嗟の判断。

これでは、土方さんは怒れない。
座が白けることもない。さすがだと思います。

言わずもがな、唐さんは自分にとって親分ですが、
唐さんご自身は多くの先輩に可愛がられ、多くの才能から学んで自分の滋養にした
いわば時代の弟分でもあります。

先ほど挙げた土方さんや渋澤さん。
寺山修司さんや若松孝二さん、大島渚さんもそう。
挙げれば数えきれない人たちとの交流が唐さんを唐十郎たらしめた。

「あんたに決まってるだろ!」と言いながら殴る。
その瞬時の判断、動物的な反射神経には、ちょっとかなわないなと脱帽します。


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