12/29(水)年末の収穫②

2021年12月29日 Posted in 中野note
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先ほど帰宅しました。KAATの仕事は今日が仕事納め。
神奈川県民ホールで年末恒例『ファンタスティックガラコンサート』
という催しがあり、これにも立ち会いました。

プログラムが良かった。
こういうものは普通、メジャープログラムの羅列になりがちですが、
『ラボエーム』の名場面に並んだプッチーニ『交響的奇想曲』、
R.シュトラウス交響的幻想曲『イタリアより』など、初めて聴きました。
おそらく今後も聴く機会のないであろうレア曲です。
珍しいものを体験することができました。

この年末に得たものとして、新作落語のカリスマ、
11月30日に亡くなった三遊亭円丈師匠の作品に重点的に
触れたことがあります。

新作を聴きつつ、『師匠、御乱心!』という文庫本を
読みましたが、これが異様な吸引力で一気に読ませるものでした。


師・三遊亭圓生が既存の協会を割って出ようとした動きが
人言関係を砕いていく様子が克明に描かれています。

その中で、師とのすれ違いや兄弟弟子たちとの別離、
信奉する三遊亭一門没落の屈辱と反骨を描き、思いの丈を
ぶちまけたドキュメントですが、自分をすり減らし、
身を切って書かれた内容でした。

自分も唐さんという師がいるわけですが、
演出と作者という棲み分けが自分の場合はできる。
けれど、落語家はひとりひとりが完璧な個人商店ですから、
根源的には軋轢が避けれらない。
そんなことも考えました。

当然、YouTubeで師匠のネタを見聞きし、CDも聴きました。
そして「オヤ?」と思いました。

ニュースで円丈師匠の死が伝えられた時、
代表作としてアナウンサーが紹介したのが『グリコ少年』、
そして『悲しみは埼玉に向けて』でした。

後者は、師匠の落語コレクション1stに収められています。
何度も何度もリフレインされて耳に残るせりふに
「19時43分発、準急新栃木行の発車ベルは、まだ鳴っています...」
というのがあります。1980年初演とのこと。

......そうです。唐さんが23歳の時に書いた
『24時53分「塔の下」行きは竹早町の駄菓子屋の前で待っている』
に似ています。偶然かも知れませんが、似ている。

円丈師匠は1944年12月生まれですから、1940年2月生まれの唐さんの
4歳年下であり、学年的には5学年後輩、同じ明治大学演劇科を
師匠は中退されているそうです。

ひょっとしたら影響を受けたかも知れない。
そんなことを考えながら聴くのは愉しいものです。
ちなみに、『24時53分〜』が収録された角川文庫『煉夢術』は
1976年刊行です。


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