8/31(木)鷹さんの教え
2023年8月31日 Posted in 中野note
↑机と本棚に囲まれても、実際には見た目よりスペースがあり、
激しく動き回れます。
津内口と林麻子のふたりを相手に『鐵假面』1幕から抜粋して立ち稽古。
今回の上演にふさわしい演技スタイルを探るのが目的ですが、
どうしたらせりふと動きを御して役者が自由に振る舞うことができるか、
それでいてせりふが求める世界を余すことなく表現することができるか、
演じてもらい、話をし、また演じてもらい、の繰り返しです。
特に今日は事務スペース全面を使うことができたので、
冷房のなかで稽古しました。ここ最近のようにドロドロにならずに済み、
工夫の凝らしかたも冷静です。
稽古を進めるうち、ヒロインのスイ子がわざと淫蕩ぶってみせる
せりふに行き当たりました。
「あなた、乱行はどうしてお嫌い」などというせりふを言うのです。
最初、津内口はこれをドスを効かせて言いました。
けれど、こういうせりふは悪ぶることなく、かえって穏やかに
言った方が効くものです。その後、相手役の童貞青年・タタミ屋は
自分がいかにセクシャルなものを嫌悪しているか語るわけですが、
こういう突飛でエロいせりふは、静かに言った方がその魅力が出て
相手役の拒絶感も引き出せようというものです。
・・・と、このシーンを稽古しながら、かつて学生時代、
大久保鷹さんに教わったことを思い出しました。
あれは20歳の頃の大学3年時。
立ち上がりたての唐十郎ゼミナールで
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』を上演した時、
本番を観にきた鷹さんは僕らにせりふ術を授けてくれたのです。
主人公の忠太郎が床屋の見習いを始めた場面でした。
床屋のおやじは忠太郎をいじめるべく、彼を「おい!」と
呼び出しておいて「用があったら呼ぶね」と言うのです。
これを、同級生だった石井君はドスを効かせるようにに演じました。
いかにも強面です。ところがこれを観た鷹さんは、こういうせりふは
ニコニコと、さらにクネクネと、相手を撫でまわすような優しさで
言うべしと例を示したのです。
参考にすると、奇妙ないやらしさ、悪意が出来しました。
そして、翌日の本番ではてきめんにこのせりふがウケた。
効果は絶大でした。相手の痛ぶりかたにこのような陰湿な
やり方があることを私は知り、今日はそれを津内口に伝えました。
彼女の人間としての抽出しも、これでひとつ増えたことでしょう。
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