9/16(水)安保さんに捧ぐ③
2020年9月16日 Posted in 中野note
↑昨日と同じ『唐版 風の又三郎』パレスチナ公演より、サングラスの安保さん
昨日の続き、唐ゼミ☆で『鐵假面』を上演した時の思い出です。
主題歌『ヒドラの髪油』の話。
この名曲、1幕に2回、2幕に2回、要所で歌われることになっています。
うち3回はヒロインが歌い、1幕の終盤には鉄仮面の群れによる合唱もある。
何度も繰り返し披露され、印象に残ります。
その歌詞はこんな具合。
『♪ヒドラの髪油』
細長い指でぬりたくる ヒドラの髪油それが頬をかすめると 肌はうろこだつ
冷たい下等な血を秘めて あの女がゆく
手には生臭い ボストン・バッグ
燃えあがる息でからめとる ヒドラの髪油
それが胸を流れると 肌はにおいだつ
ホロリとあつい風をまき あの女がゆく
手にはきな臭い ボストン・バック
これにはおかしなことがあって、唐さんの台本にはどう見ても1番しか無い。
ところが、安保さんが私に託してくださったテープには2番がある!
気になって伺ったところ、この2番は大胆にも、
安保さんご自身が作詞してしまったのだそうです。
「ボクは作曲だけでなく、唐さんが作りそうな詞を書くことも得意なんだよね」
と笑いながらおっしゃっていました。
実に良い2番だと思いました。
そこで私は、唐ゼミ☆での通し稽古、唐さんによる稽古総見で、
2幕にヒロインが歌ううちの1回を、2番に替えて椎野に歌わせました。
安保さんに応えたかったし、何より劇終盤に2番の詞がすごくマッチしたのです。
↓2幕でボストン・バックを手に『ヒドラの髪油』2番を歌う椎野
通し稽古後に唐さんに事情をお話しすると、
「あの歌詞も良いね」とたいへん満足されていました。
さすがは安保さん。
この歌詞には2幕の内容が実に色濃く反映されています。
実際、安保さんは自己主張をしたのではなく、
唐さんを追いかけ、唐さんの内部に入って、唐さんならどう考えるのだろうと
思案したのだろうと思います。もちろん、遊びゴコロとともに。
どんなに追いかけても唐さんご自身にはなり得ないわけですが、
その安保さんの姿勢には、自分も大いに共感しました。
同じように唐さんを追いかける者として、私もまた今日に至ります。
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