5/10(月)三日会わざれば刮目して見よ
2021年5月10日 Posted in 中野note
↑開演前の駿府城公園
ちょっと前の報告になりますが、再びSPACに行ってきました。
4月末の『おちょこの傘持つメリーポピンズ』に引きつづき、
観に行ったのは『アンティゴネ』。久々にギリシャ悲劇を観ました。
すでにアビニョンとニューヨークで絶賛されてきた公演です。
三途の川をモチーフにしたセットで繰り広げられた野外劇でしたが、
主人公アンティゴネの妹で「イスメネ」という役に強く惹かれました。
アンティゴネはまさにギリシャ悲劇の英雄です。
国法に逆らって信念を貫くことに迷いなく突き進む。
敵役の伯父・クレオンは為政者としての風格を備えている。
心情的にアンティゴネの行動を理解しても、
国政を預かるものとして立場から決して彼女に譲ることがない。
そこへいくと、イスメネは人間的です。
姉の行動が人間として恥ずべきことではないと充分に理解しながら、
やはり法を犯す恐ろしさにすくむ。姉に行動を慎むよう諭す。
一方で、いざ姉が事を成し、王によって彼女が
裁かれようとする土壇場になると、一転、自分も共犯だと名乗り出る。
アンティゴネより、クレオンより、弱さや迷いに満ちて人間的。
それに、ここぞというところで圧倒的に飛躍がある。
その無力感が犠牲的精神につながり、魅力的です。
宮城聰さんの美学的ステージとともにイスメネの発見があって、
大いに愉しみました。
終演後は、先日の『おちょこの傘持つメリーポピンズ』で
舞台監督の大役を果たした小川哲郎さんと再会。
舞台監督は、裏方のすべてを差配する重責です。
SPACのような一流のカンパニーでそれを担うのは
並大抵の苦労ではないはずです。
出会った頃は、ミュージシャンでもあり、
長野のライブハウスの支配人だった彼が、
舞台の世界に転じてたった数年でここまで活躍している。
日々、彼が過ごしている過酷を想像します。
久々に接して、相変わらず優しくて謙虚だけれど、
数年で急激に叩き上げてきた厚みが感じられました。
持って生まれたもので他を圧倒するヒーローも凄いけれど、
急激に変化できる人にはそれとは別の魅力があります。
人は変わる。強烈なドラマに接して帰ってきました。
↓終演後に、立派になった小川哲郎さんと(もう"哲郎君"とは言えない!)
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