8/16(月)音楽をたよりに⑤〜今日もバッハを聴いている

2021年8月17日 Posted in 中野note
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↑たった二日間で終わってしまった『棲家』公演。
今度は実際の舞台を上演しよう。そう言い合って一旦、お別れしました。


『棲家』のリーディング公演から一夜あけ、
今日は『続ジョン・シルバー』のワークショップを行いました。
(詳しい内容は、明日このゼミログで佐々木が書いてくれる)

面白かったのは、やっぱりここでもやたらとバッハが鳴っていたことです。

オルガン曲のトッカータとフーガBWV540と、
有名なヴァイオリンの無伴奏バルティータ No.2より。いわゆるシャコンヌ。
昨日までは太田省吾さんの指定でしたが、今日は唐さんからのオーダーです。

オルガン曲は、ヒロイン・小春がスポーツカーのカーステレオで
爆音で鳴らしながら疾走する曲。
「ジュールス・ダッシンの映画『死んでもいい』のエンディングのように」
と、律儀にも元ネタがト書きに書いてあります。

一方、舞台となる喫茶店に妙な庶民連中が集まってくると、
小春を囲うボーイは店の格調を取り戻すために、
シャコンヌのレコードをかける。
いわば、塩を撒いてお浄めをする、といった風情でバッハが使われます。
やはり、ここでもバッハ。


ところで、こういう風に、
有名作曲家の手による曲であるがゆえに演奏パターンが際限なくあって、
その中から劇の進行やせりふとの組み合わせに合うものを選ぶように
なったのは、『続ジョン・シルバー』初演が最初でした。

特に、先ほど挙げた『トッカータとフーガ BWV540』。

この曲は、誰もが聴いてわかる超有名曲ではありませんし、
本来、10分以上ある曲の中ほどの部分が映画に使われており、
まずはタイトルを探り当てるのが大変でした。

どうしたら良いか分からなかった私は、
とりあえず横浜駅に当時あった新星堂クラシック館の店員さんに
動画の音声を聴いてもらって、曲名を訊ねました。

店員さんは、実に丁寧に相談に乗ってくださって、
何度もメロディを聴いてしばらく思案した後、見事に曲名を導き出しました。
これには、さすが専門家だと感嘆しました。

そして今度は、クラシックが専門の茂木一衛先生のところに行って、
東京文化会館の二階にある資料室のことを教わりました。
あそこでは、図書館のように膨大なディスクを聴くことができる。

さっそく駆け出していって、何十種類聴いたか。この時、
私は映画で使用されたのが破格のスピードであることを実感しました。
数あるCDの中で最もスピーディーな録音の、明らかに1.5倍は速い。

こうすれば作品に合うと判断した、
ジュールス・ダッシン監督のセンスに改めて脱帽しましたし、
メロディラインからこれを見破った新星堂の店員さんのことを、
さらにエラい!と思いました。

もともとの映画では、オルガンと奏者を調達して、
超スピードで弾いてもらって音源をつくったに違いありません。
もちろん、私たちにはそんな資力も設備もありませんから、
もっとも近い速さのものを選んで、加工して使いました。


一瞬にして通り過ぎるヒロイン・小春の爆走にも、
それだけの冒険を孕むところが、演劇づくりの醍醐味です。

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