6/5(土)誰も乗っていない

2021年6月 5日 Posted in 中野note
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↑すれ違いざま。とっさに撮影した乗客のいないバス。

雨の日には、日課の散歩がままならなくなります。
地下街に行ったりして、できるだけルーティンを守ろうとしますが、
やはり晴れの日に動くのとは訳が違います。
だいたい、何かと時間が取られすぎる。

そういう日は、一日のうちにやりくりをして、
なんとか目標とする運動量をこなそうとします。
先日は、仕事が終わる頃には雨も上がっていたので、
目下勉強中の英語(中学2年レベル)をイヤホンで誦じながら走りました。

すると、交差点に止まっていたのは、誰も乗っていないバス。
緊急事態宣言の出ている東京ほどではありませんが、
神奈川-横浜もまた夜遅くの人出はまばらです。
その影響からか、見事に乗っているのは運転手さんだけでした。

ああいう時、自分だったら大声で唄なんか歌うかな。
などと思いながらすれ違いましたが、同時に、
かつて私たちが2006年の春に行った公演
『お化け煙突物語』を思い出しました。

あれは、下町の「お化け煙突」、
つまり、本当は四本あるけれど、見る時間や角度によって
1〜4本までさまざまな本数に見える煙突をモチーフにした演目でした。
昭和の東京墨田区の名物だったので、
マンガ『こち亀』なんかにもあの煙突にちなんだエピソードが出てくる。

そこで私たちは、まだまだ公演場所探しに不慣れな時期でしたが
下町を何度もロケハンし、細い細いツテをだとって、
なんとか東武東上線の業平橋駅のわきにあった
あのコンクリートの空き地にたどり着いたのです。
本当に沢山の人の温情によって行き着いた場所でした。

程なく、そこで公演していると、線路側から数十メートルのこと。
エンディングにテントが割れる時には何本もの電車が行き交いました。
そして、夜9時頃のあの路線に、乗客の姿は数えるほどでした。

多くのお客さんは、ラストに電車が見えることに喜んでくれました。
が、唐さんは少し違って「あのガランとした、幽霊電車みたいな景色がいいね」
と褒めてくれました。やっぱり眼のつけどころが唐十郎だ。
そう思った記憶があります。

あの場所。今は東京スカイツリーが建ち、駅名も変わりました。
一瞬、私たちの劇場だったあの場所こそ、あの演目にとっての最高の会場でした。

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