2/8(月)コインロッカーと機動隊
2021年2月 8日 Posted in 中野note
他人のアイディアを見事に自家薬籠中のものとし、
唐十郎流に生まれ変わらせます。
目下、ワークショップで取り組んでいる『盲導犬』も、
それまでに唐さんが見聞きしたものをうまく取り込んでいます。
これは前回のワークショップで話したのですが、
例えば、コインロッカーという舞台装置。
初演が行われたアートシアター新宿文化はそもそも映画館ですから、
奥行きが4メートルという超手狭なステージです。
そこに、転換なしのセットとして、新宿駅のコインロッカーが構想された。
これは、明らかに1969年に初演された『真情あふるる軽薄さ』の
ラストシーンに想を得たものです。
階段だけのセットで繰り広げられる同演目の終幕、
集団意識に染まらない反骨の若者を打ち据えるために、
場内には機動隊員が乱入します。(もちろん、役者が演じた偽者)
すると、「振り落とし」といって舞台背景の大幕が落ち、
ジェラルミンの盾がズラッと並んだ壁面が現れます。
細部を見るまでもなく、それはどこか手仕事の雰囲気の残る
荒っぽい表面なのですが、それがきっと、
かえって迫力に結びついたことでしょう。
一面に、シルバーの長方形が連なった壁面が
ギラリと光る光景が繰り広げられます。
そしてこの景色が、4年後の『盲導犬』に結実します。
そういえば、1979年初演の『近松心中物語』の池や遊郭をヒントに、
唐さんは『下谷万年町物語』の瓢箪池と長屋の連なりを描きます。
蜷川さんから受け取ったものを増幅して蜷川さんにお返しする。
これぞ演出家に対するあて書き。実に美しい関係です。
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