7/25(土)パンプルムスの頃②

2020年7月25日 Posted in 中野note
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↑仕込み日、休憩中の風景

新宿3丁目にあったパンプルムスの話の続きです。

サイズが適当であること、料金が手が届くものであったこと、
それにも増してこの劇場が私にとって重要だったのは、立地でした。

パンプルムスが2階にあったビルの近くには、
かつて「泉」という喫茶店がありました。
その向かいに新宿文化ビル。「アートシアター新宿文化」と呼ばれ、
幾多の前衛映画や前衛劇、そして唐さんと蜷川さんの初仕事である
『盲導犬』が初演された場所でした。

若き日の石橋蓮司さんや蟹江敬三さん、緑魔子さん、桃井かおりさんが
出演した、劇団櫻社による舞台です。

本来、「アートシアター新宿文化」は映画館で、
そのロードショーが終わる21時過ぎに一党は搬入を開始。
スクリーンの前の奥行きのない舞台、乏しい照明を逆手にとった
芝居を上演していました。『盲導犬』の美術が新宿駅地下街の
コインロッカー前に設定されたのも、明らかに空間の制限を
チャンスに変えるアイディアです。

櫻社のメンバーは「泉」で今か今かと映画の終わるのを待ち、
数十分の仕込みで開演を迎えるべく新宿文化に乗り込んだと言います。

ですから、当時の私にとって、パンプルムスは痺れる場所でした。
本番の日、あの新宿3丁目に向かうというだけで興奮しました。
本番前に唐さんと一緒に目の前のプロントに行き、
アイスコーヒーを飲んだだけで感動しました。

唐さんと話しながら、
蓮司さんや魔子さん、蜷川さんと唐さんがスタンバイし、
アートシアター新宿文化の周りを観客がとぐろを巻いていた『盲導犬』初日が
どんなだったろうと想像しました。

この場所での公演を目標に2003年は過ぎ、
2004年の初夏、私たちは『盲導犬』の上演に挑戦することになりました。

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