3/3(火)当時は歯が立ちませんでした

2020年3月 3日 Posted in 中野note
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↑劇団で本読みをする時には、思い出深いこの本も並べて読みます。

演劇に興味を持った高校時代、
唐さんの存在を知った私が迷わず手を伸ばしたのは、
白水社から出ていた青色の『少女仮面・唐版 風の又三郎』と
赤い表紙の『特権的肉体論』でした。

そして白状すると、当時はまったく読み進められませんでした。

最高傑作との評判を頼りに『風又』に挑戦しても、
まず「織部」を何と読むかわからない!
(「おりべ」と読みます。ギリシャ神話の「オルフェウス」より)

まして彼が、この長い物語の主人公であり、
精神病院から脱走した宮沢賢治フリークの青年だとは、
読み解けようはずもありませんでした。

さらに、「三腐人」には、輪をかけて苦しみました。
あれ、初見で「さんぷじん」と誰も読めないでしょう(笑)

彼らは元・自衛隊員で、
後輩の高田三郎がしでかした飛行機の乗り逃げのために隊をクビになり、
今は帝国探偵社に勤める調査員となっています。
誇り高い自衛隊員が、「帝国」とは名ばかりの職場で、
浮気調査などやらされていたら、そりゃ腐るよな、
などと今だったら多少なりとも人間扱いして彼らを理解するのですが、
当時の私にそんな余裕があろうはずもなく、
ただただ天を仰いで自分の無力を恨むばかり。

マジかよ。
東京の人は理解しているから「唐十郎はスゴい!」と言えるに違いない
こんなことでは、オレはまったく歯が立たないのではないか.......
そんな不安でいっぱいでした。

ですから、この白水社版を見ると、当時の自分を思い出します。
そしてまた、あの時の自分の感覚を忘れてはならないとも思うのです。

だって、初めて唐さんの芝居を観たり、
台本を呼んだりする人は似たようなものでしょうから、
そんな人も巻き込みながら、唐さんの世界を前進させたいのです。

あんまり説明的でも堅苦しいですが、
ライブの迫力だけ面白がられて訳わかんないのもちょっとねえ。
そんなバランスを心がけて、いつもワークショップや稽古しています。

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