3/24(水)心をわしづかみにするせりふ

2021年3月24日 Posted in 中野note
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↑唐ゼミ☆ワークショップ、参加者も増えて盛り上がっています。
ちょっとした仲間意識も芽生えつつあります。

いつもは毎週月曜の朝に行う唐ゼミ☆劇団員集合。
近況を報告し合い、議題によっては話し合いをし、本読みをして作品を検討する会。

月曜、私には結果的に無くなってしまった出張の可能性があったので、
劇団員に呼びかけて、今週だけは水曜日にしてもらいました。

締め切り間際となった新人劇団員募集に、10代の人から問い合わせがあった。
かなり若いけれど、どうしよう?

SPACの『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』
唐組の『ビニールの城』
新宿梁山泊の『ベンガルの虎』
立て続けになるけど、どんな日程で観にいこうか?

そんな話をしました。
その後の本読みでは、目下『ベンガルの虎』に取り組んでいますが、
今日は激しく私の胸を打つせりふに出会いました。

場面は2幕。競輪場の車券売り場で、
ヒロイン「水島カンナ」と名物車券売り嬢の「お市」は
売り場の穴越しにつかみあったまま引っ張り合いになります。
戦争で息子を亡くした「お市」は入谷町内の子どもという子どもを
産まれる時に引き揚げた、すご腕の産婆でもある。
その二人が、ヒートアップする引っ張り合いのさなかにこんな問答をします。

お市  あたしにひっぱり出されるのさ。この穴を通ってな。

カンナ この婆さん、ムチャクチャ云いよんねん。あたしがこの穴をぬけられると思ってんの?

お市  人間はみな、この位の穴から出てきたんじゃ。

カンナ だって、あたし大人よ。

お市  どうしてそんなに大きくなったんだ、このメスネコが!

カンナ 人間はみな、大きくなってゆくのよ。

お市  いかんっ。

カンナ いかんと云ってもいかんのじゃ。

お市  たのむ。わしにひきずり出されてくれ。わしは産婆じゃ。


どうですか?
私はこういうせりふに感じ入ってしまうのです。
「人間は皆、この位の穴から出てきたんじゃ」
こういうせりふには、思わずうんうんと納得してしまう。

それに、「大きくなってはいかんっ」という。
大きくならないで欲しい。可愛いままでいて欲しい。
というのは、子を持つ親、誰にも共通する思いでもある。
ましてお市は、大きくなったがゆえに戦争で息子さんを亡くしているのです。

圧倒的な母性。母としての哀しみ。それらを含みながら
あくまでバカバカしくもコミカルなこのやり取り。
ここには悲喜こもごも同時多発の感情爆発があり、私はわしづかみにされました。

惜しむらくは、残念ながら2月に予定されて中止になってしまった
流山児事務所の『ベンガルの虎』。あの公演の「お市」役には
大久保(鷹)さんがキャスティングされていたらしいのです。
鷹さんこそ、支離滅裂に見えて、こういう一言一言の機微を心得た俳優です。
大久保さんが支離滅裂に見えるとすれば、機微を心得すぎているために、
一つのせりふ、一つの場面に再現なくのめり込み、
極度の部分肥大が起こってしまうからだというのが、私の説です。

ともかくも、私は心打たれました。
こういうシーンを皆で稽古すると、いきおい燃えるのが性分であり活力の源です。
唐さんに会えて、オレはやっぱり良かったなあ!

今日はこれからワークショップ。同じ1973年に初演された『盲導犬』の終盤です。
と、同時に、3/24といえば唐ゼミ☆立ち上げの大功労者である室井先生の誕生日。
最近ぜんぜん会っていないのですが、なんだか元気だと聞いています。

先生、おめでとうございます!

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