8/28(土)鷹さんの舞台
2021年8月29日 Posted in 中野note
そこで、公演に備えて文章を書いたり、
音響用の台本を作ったりしました。
ひとつの公演を達成するには膨大な仕事量があって、
我ら劇団員たちは分担してコツコツとこれを積み上げていきます。
ある人は衣裳を詰め、ある人は美術を詰め、ある人はご案内を作り、
ホームページの更新に備える。
関わっているキャスト・スタッフへの先々に関する連絡や、
今だと感染症対策なども山積みで、気が遠くなるような心持ちにもなりますが、
ひとつひとつ倒していこうと、全体で押し上げています。
私的には、KAATの仕事もしていて、
今日は一日劇場に詰めて働き、その中で、合い間に劇を観ました。
ちょうど、昨日8/27から、
『湊横濱荒狗挽歌(みなとよこはまあらぶるいぬのさけび)』
という劇が開幕して、大久保鷹さんが出演しています。
折に触れて、いつも私たちにさまざまな指南をくれる鷹さん。
今回は台本がなかなか仕上がらず、苦労されているとも聞いていたので
ずっと鷹さんのことが気になってきました。
私は二日目の昼の上演を観たわけですが、
鷹さんはほころびや不安を一切感じさせず、
荒ぶる自分を押さえて、物語の全体や他に登場人物たちを
俯瞰で見ているという役割を果たされていました。
先日、電話でご本人と話したら、
「出番もせりふもなるべく少なくしてくれるよう頼んだんだ」
などと、冗談とも本気ともわからないことを仰っていましたが、
実際の出番は多く、せりふも各所にあって、要所を締めていました。
大久保さんは、舞台姿の激しさとは裏腹に、
普段はかなり穏やかで、優しい人です。
それでいて、背後にはやっぱり巨大な激情を感じさせます。
今回は、謎と凄みを感じさせて露わにしない、そういう佇まいで、
全体を支えていました。
観終わると、唐さんの『愛の乞食』を思い出しました。
ヤクザたちとつるんで生きてきた警察官がいて、その息子が主人公です。
彼自身は、汚れた父親のようではなく、真っ当な警察官たろうとする。
しかし、結局は品行方正な警官に収まっていることができず、
アウトローへの道を突き進んでいく。そういう物語です。
タイトルに、狗(イヌ)の叫びとありますからね。
本来は社会正義に従順であり、時に権力のイヌとも蔑まれる警察官の
青年が、ついに我慢できずに叫んでしまう。
その過程が見ものです。
本当は楽屋見舞いなんかをしたいけれど、
感染予防対策のために人と人との接触は極限まで減らさなければならない
状況です。ですから、近くても遠くにいる大久保さんに、
精一杯エールを送っています。
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