4/3(土)唐十郎の頭の中に"潜入"する-『海の牙-黒髪海峡篇』WS

2021年4月 3日 Posted in 中野note
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↑この映画の内容は、残念ながらあまり関係ありませんでした

経済人類学者の栗本慎一郎先生から
"潜入"について教わったことがあります。
英語でいうと "Duel Inn"

考古学者を例にすると分かりやすいのですが、
彼らは遺跡があると見込んだ大地を掘って、
その中から出てきた出土品、骨や、建築物などを集めます。
これを重ねていき、それらの量がある一定レベルに達すると、
かつてそこで営まれていた生活の様子が、
まるで実際に体験しているように感じられる。

この時、出土品などヒントになるパーツを、"諸細目"といいます。
で、"諸細目"が一定量に達して全体が一気に体感できるようになった
状態を"潜入"という。

私が日々、せっせと唐さんの台本を書き写すようになったのは、
三田佳子さんの影響です。唐さんと親交のある三田さんのエッセイを
読んでいたら、自分は台本をすべて書き写す、という一節があり
すばらしいことだと思いました。ご自身のせりふだけでなく、
全編を書き写すというのがポイントです。見事に徹底している。
さすがは三田さんです。

以来、それまでは劇団員で分担して行っていた
台本のワード打ちを自分ひとりでやってみたら、時間はかかるものの
面白いし、何より得るものが大きかった。以来、現在に至るまで、
これ!と思った台本には全てそうしてぶつかっていくようになりました。

栗本先生の謦咳に触れるようになったのはその後のことで、
これは大学で働いていた時に室井先生が、連続講座のゲストに
栗本先生を招いて下さったのがきっかけです。
"諸細目""潜入"自分には先生のおっしゃることがいちいち腑に落ちました。

その後、私は読むべき資料がない時、
手持ち無沙汰に白川静さんの本をよく読むようになりましたが、
古代文字をトレースし続け、古代人と古代社会に思いをはせ続けた
白川さんこそ、"潜入"界の王様だと思いました。

古代文字をまるっきりトレースしながら、
ちょっとした膨らみに、腹に、文字の細い太いに、
古代人の祈りや生活の様子を嗅ぎ取る。その感覚こそ、
芝居をやる者にとってもっとも必要な資質だと思います。

来週から始まる唐ゼミ☆ワークショップ『海の牙 -黒髪海峡篇』では、
まず、作品が執筆する前に状況劇場が行った『ベンガルの虎』
バングラデシュ公演時の唐さんに"潜入"します。

そこで唐さんはあるものを見て、筆を走らせる着想を得たに違いない。
そんな話からスタートしていきましょう!
http://karazemi.com/perform/cat67/post-18.html

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