9/8(水)丸山正吾くんの稽古はじめ

2021年9月 8日 Posted in 中野note
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↑久々に会ったら、彼は金髪になっていました(真ん中)

稽古場に丸山正吾がやってきました。
去年から「夜の男」を演じている、頼れる役者です。
彼がいると、稽古場に勢いが出る。
持ち前の身体のキレを活かし、
常にスピーディーでありたいと願うこちらの希望を汲み取ってくれます。

といっても、速いだけではダメで。
せりふが雑にならないよう、こちらから細かく提案をして、
話し合いをして、手直しをする稽古です。

「夜の男」は、名前こそ突飛な印象を受けますが、
その実、感情移入しやすいキャラクターです。
社会人として共感を呼ぶところがある。

まず、実に真面目です。
職務に忠実であり、上下関係にも厳しい。
自分の欲望に蓋をし、周囲から求められている期待に応える。
義理堅い男です。人の人との間に入ることのできる気遣いの人。
仕事に誇りを持った熱い男です。

だからこそ、報われなさが極まった時に、
ひた隠しにしてきた本当の心があふれ、とめどもなくなる。
こういう男が一旦爆発すると手がつけられません。

彼こそ、『唐版 風の又三郎』全幕を通じて、
もっとも悲惨な転落を見せる男です。

前回の上演でやったこと、
前回の上演へはやりきれなかったことを確認しながら、
ひとつひとつ稽古しました。周りも盛り上がる。


そして"転落"といえば、やはり先日にWSを終えた『続ジョン・シルバー』。
あれは、一見すると楽しげな演目ですが、
唐さんが24-25歳で書いた『ジョン・シルバー』からたったの数年で
登場人物たちがここまで転落するか!という芝居です。

小春も、ヤングホルモンズも、緑のおばさんも、当たり屋一家も、
皆が生活の重さと不幸に揉まれて、右往左往している。
その右往左往が面白さにもつながりますが、
のせられて笑っていると、巨大な哀しみがやってくる。
中でも、前作でカッコつけていた紳士は激しく転落します。

好きな女には振り向いてもらえず、
バカにしていた連中には足蹴ににされ、
かどわかした女の子が開き直った迫力に、最後にはタジタジとなる。
可笑しくてやがて哀しき道化かな。
渥美清の名言を地でいく演目といえます。

そういうことを確認してやりきれなくなってしまった私は、
今週末に『あれからのジョン・シルバー』をやろうと思いました。
あの演目までいけば、ラストには不思議な爽快感が待っています。

やっぱり希望を語らないと! そう思っています。

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