3/22(月)『蛇姫様 -我が心の奈蛇』を読む
2021年3月22日 Posted in 中野note
↑2010年の唐ゼミ☆公演より
1977年初演の大長編『蛇姫様-我が心の奈蛇』を読み解きました。
2時間の講座1回で語り尽くせ、
というお題でしたから、無理を承知で物語を必要最小限まで刈り込み
ストーリー展開の要所を押さえながら参加者の皆さんに読んでもらいました。
冒頭のト書きが物語の前日談を集約しているのは『唐版 風の又三郎』と同じです。
カロンの、つまり死の河をわたってくる船の描写こそ、
朝鮮戦争で死んだアメリカ兵の死体輸送船に混じって日本に密航した
少年・少女たちの決死行を描き出しています。
彼らこそ、ヒロインあけびの母や父の、若かりし日の姿。
船の中、極限状態での輪姦により生まれたヒロイン・あけびは、
母シノが亡くなった後、生前のシノの言葉と、彼女が残した日記を頼りに
自らの父を、出生のいきさつを探るために東京にやってきます。
そこでスリ稼業に手を染め、同じく新参のスリである青年・小林と、
その弟分・タチションに出会う。
癲癇持ちの上に右腕に怪しげな黒アザを持つ女・あけびを「姫」と仰ぐ
小林とタチション。この3人のトライアングルが完成する1幕中盤から、
2幕を経て、3幕終盤、出自に直面するあけびは慄然とします。
が、そのような出自だからこそ、小林・タチションの2人は
ますますあけびを「蛇姫様」と信じる心を強くします。
あけび→蛇姫様→憧れの女性→ナジャ→奈蛇
という連想が完成し、タイトルの意味が明らかになる終幕。
唐ゼミ☆で上演してから10年ぶりに読みましたが、やはり面白かった。
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の設定を大いにバリエーションさせながら、
そこに、ヒット作3本の美味しいところを下記のように掛け合わせた、
かなりお得な劇でもあります。
『二都物語』→朝鮮半島から渡ってきた人々の物語
『ベンガルの虎』→母とヒロインの因果関係、亡き母の特徴的な登場
『唐版 風の又三郎』→ヒロインと青年主人公の共同幻想の育み方
かなり凄惨かつ酸鼻極まりない内容ですが、
「お姫さまごっこ」に興ずる主人公たち、
「探偵ごっこ」に躍動する悪役たちの幼児性が炸裂し、
コミカルな要素に溢れたエンターテインメント作品でもあります。
久々に読み返して興奮しました。当然、もう一度やってみたいと思っています!
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