7/11(土)恋はルネッサンスの嵐なのに

2020年7月11日 Posted in 中野note
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↑11年前のちょうど今頃やりました。
17時と18時半からの2回公演ができたのも、この演目ならでは。


『唐版 風の又三郎』のような長編を手がけていると、
さすがに疲れを感じることがあります。そういう時に去来するのは、
「ああ、もういっぺん『恋と蒲団』やりたいなあ」という思いです。

『恋と蒲団』。
1976年初演の台本で、もともとは日本舞踊の花柳流の舞踊家と
コラボレーションするために生まれた作品です。

せりふだけ追いかけていくと上演時間40分程度、
登場人物は男性2人に女性1人、しかもヒロインは喋れない設定。
初演時にはこれにダンスパフォーマンスを絡めて、
1時間強ほどのステージが展開したそうです。
会場は、渋谷のジャンジャン。

私はこの台本が妙に好きで、
横浜国大で働いていた頃に新入生歓迎のために初めて上演し、
これを観てくださった建築家さんからのお声がかりで、
三田にある建築会館の中庭に青テントを立ててデモンストレーション公演
にも発展しました。
さらに九州まで行って天神のギャラリーでの発表も実現。
手軽で、しかも内容が面白くて、幸せな演目に発展した台本です。


物語は、あまりに奥手で女性に縁遠く、独りごちてばかりいる青年が、
恋の達人であるドンファン「万学(万年学生服の略)」から
恋愛指南を受けるという他愛もない内容です。

が、相手の女の子が聾者であり、やがて視覚の奪われた闇の中で、
触覚のみによる男女のまさぐり合い、動物めいた色恋が繰り広げられる。
このあたりが唐さん流で、冒頭、あまりに長すぎる主人公の独白も、
唐作品でしか味わえない過剰さに溢れています。

今日のゼミログのタイトルは、「万学」が「青年」に
ぜひとも勇気を出して恋愛にチャレンジするよう諭す場面で
吐かれるせりふです。

恋はすばらしい。まさにルネッサンスの嵐であると。

しかしよくよく読むと、このひと言。文法的には無茶苦茶です。
なのに、というか、だからこそ、
誰が聴いても言わんとすることがダイレクトに理解できます。

そのあたりの不思議さが唐さんの言葉のセンスであり、
このせりふをして、ライトな短篇ながらも勢いに溢れています。
唐作品に疲れを感じた時は、別の唐作品を思い出して気分転換。

ああ、もういっぺん『恋と蒲団』をやってみたい。

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