10/16(金)舞い上がる鳥の羽

2020年10月16日 Posted in 中野note
DSC01987.JPG
↑当時、劇団員だったニワトリ役の寺坂君。
衣裳にも、苦労して調達した羽があしらってありました。

昨日はKAATの仕事で、安藤洋子さんらと象の鼻テラスにいました。
進行する熱心な会議。すると、ドンッ!とぶつかる音がして、
驚いて顔をあげると、紛れ込んできた一匹の鳩!
壁や窓、天井など、あっちこっちにぶつかりながらジタバタしている。

テラスに来ている人の中には多少の悲鳴も上がりましたが、
可哀想なのは鳩の方。とにかくぶつかりまくっている。
アート作品を壊してもいけないので、
私は隅に追い込んで優しく掴み上げ、外に開放しました。

しかし、少し触れただけで、その羽の抜けること抜けること。
舞い上がる大量の羽毛を眺めながら、ハッと思い出しました。
そうだ!!! 私たちは過去に公演のために、
ひたすら鶏の羽をかき集めていたことがあったのです。

あれは2003年秋。演目は『鉛の心臓』。
この芝居には、新興宗教に入信した娘を
取り返すべく教団に詰め寄る一家が出てくるのですが、
その家族の中に、ペットとして役者の演ずるニワトリ役が
設定されていたのです。

そのニワトリに関連して闘鶏のシーンもあり、
とにかく私たちには大量の鶏の羽が必要でした。

そこで、横浜市内にある養鶏場に3人で数日通い、
抜いたりむしったり拾ったりしながら、
私たちはゴミ袋いっぱいの羽毛をかき集めたのです。

持ち帰ると、雑菌が入ってはいけないから、
今度は熱湯をかけて消毒し、さらに丁寧に乾かす。
結果、ふんわりと舞い上がる軽やかさも出たし、
何より変えがたいリアリティを得ました。

中には羽を吸い込んでしまってむせる役者もいたけれど、
あそこにこだわって良かった。
舞い上がる鳩の羽を眺めながら思わず甦った、懐かしい光景です。

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)