2/5(金)ほんもののイヌ
2021年2月 6日 Posted in 中野note
↑私たちの場合はぬいぐるみ。唐さんは「リン・チン・チン」と呼んで
面白がっていました。
ワークショップが始まったおかげで頭の中が『盲導犬』になっています。
自然と唐さんとした様々な話も思い出します。
唐さんによれば、『盲導犬』初演時、
蜷川演出によるアートシアター新宿文化公演では、
冒頭からほんものの犬が登場したそうです。
シェパードを5匹。
そういった施設から借りて、毎日返していたと。
その効果は絶大で、劇の冒頭から300席キャパの劇場の通路をつたって
犬が歩いてくると、プンとした匂いや毛並みもたなびいて、
異様な迫力を帯びたと云います。
同じく現場をやっている身としては、
その犬たちを借り受けるためにどれだけのコストを払ったろうと想像します。
お金もさることながら、手間として。
終演23時を過ぎるような状態で、果たしてどこの施設が貸し出しを
許可してくれたのか。そんなことが気に掛かる。
手間隙と芸術性が紙一重というのが、現場をやるものの実感です。
ところで、この劇にはもう1匹のイヌが登場します。
劇の中盤、フーテンが犬屋からかっぱらってくる小型犬です。
唐さんによれば、この子犬はたいへんに印書深かったそうです。
(この芝居には、客席から立ち上がった作者がト書きを読むというくだりが
あり、そのために唐さんは足繁く公演に通っていたそうなのです)
そこで目撃したのは、登場前、舞台袖で緊張して嘔吐を繰り返す子犬。
これからステージに出るという緊張に小さなからだが耐えられず、
か細い声を上げながら、キャンキャンと吐き続けていたそうなのです。
あれは可哀想だった、とおっしゃっていました。
そこで、私たちの公演では、冒頭の写真に挙げたぬいぐるみを使用。
それにしても、冒頭の立派なシェパードより、
なぜだかその小型犬の姿の方をよく覚えているところに、
取り残されたもの、マイナーなものを好む唐さんらしさが
あると思っています。
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