4/21(水)驚異のロングストレート
↑これが龍眼肉(スゴい名前!)の花。ハチミツとれるらしいので、
探して舐めてみたいです。
今日は『海の牙-黒髪海峡篇』のワークショップでした。
昨日のゼミログに書いたような事情で、
最近の私の頭の中を1973年が支配しています。
正確にいうと、その時代に唐さんが何を見ただろうと考え、
感じ取りたい。そういう想像が渦を巻くのです。
『ベンガルの虎』は映画『ビルマの竪琴』のパロディから始まります。
引き揚げていく旧日本軍の男たちによって『はにゅうの宿』が合唱され、
名ぜりふ「水島、いっしょに日本へ帰ろう!」が連呼されます。
あの映画には、主人公の水島上等兵が日本に帰らず、
ビルマに残ることを決意する場面があります。
文字通り死屍累々、そこここに野ざらしになって転がる同胞の遺体を
目の当たりにし、彼は後の人生を弔いに捧げようと決意する。
実際のその土地がどうだったか。
ネットで画像検索すると多くの写真が出てきます。
戦闘によってではなく、飢餓と病気の果てに無念の塊となって
転がる人々。まさに「白骨街道」と呼ばれるにふさわしい光景です。
そこにとどまった水島の実感を、唐さんはこんなせりふに託しています。
「昭和三十二年九月十日、晴れ。おまえは見たことがないだろう?
竜眼肉の花を。ベンガル湾の陽光を。
余りに明るすぎて目の前が暗いこの白骨街道。
ここでは、真昼だというのに黒い大きなこうもり傘が丘を包んでいる。
俺が一歩ふみこむと、そのこうもり傘は大きくひらいてこなごなになる。
分るかいカンナ。それは死体にむらがるカラスの群れ。
夜の街道にぶったおれて俺は昨日夢を見た。
俺の顔にしなだれかかるおまえの黒髪すだれ。
気がつくと月もない夜だった。この暗闇の中で、今、俺は白骨を枕にしている。」
じりじりと照りつける太陽のもとで、骨はいよいよ白く、
夜になれば闇の中にぼんやりと浮かぶ光景が描写されています。
最近、、よく読んでいる白川静さんの『字統』によれば、
「白」という文字はシャレコウベのかたちに由来し、
「道」という漢字は、古代王朝「殷」に暮らす人々が異民族の首を
街道の脇に並べて魔除けとしたところに基づいているのだそうです。
とすれば、「白骨街道」こそ道の中の道であり、
そこに散らばる白が、さらに鮮やかさを増すように思います。
唐さんはきっと持ち前の古代人的な感覚をして、
そういうイメージを捉えたに違いない。
二幕終盤、競輪選手となった水島上等兵が進む白骨街道の、
あの異様なまでの直線、真っ直ぐさに、道の中の道という迫力を感じます。
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