2/12(金)時代劇がいい?

2021年2月12日 Posted in 中野note
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↑『由比正雪』こそ珍しい時代劇。一応、唐さんの時代劇です。

ワークショップで取り上げている『盲導犬』ですが、
この台本の誕生には、蜷川さんの窮状がきっかけとなったようです。

1969年に創立した「現代人劇場」は、
『真情あふるる軽薄さ』を皮切りに清水邦夫作品を上演していきます。
が、1972年に行き詰まりを迎える。
当時の蜷川さんたちは政治運動と連動した演劇活動を
繰り広げていましたから、「あさま山荘事件」の衝撃は大きかったはずです。
誠実な闘争の結果が凄惨な事件を生んだわけですから、
他人事ではなかったと推測できます。

そんな時、唐さんはヒット作の『二都物語』を上演していた。
上野不忍池を背景に行われた冒頭場面は、伝説のワンシーンです。
机を背負った大久保(鷹)さんが池を泳ぎ、舞台上に駆け上がって
職業安定所をひらく。
その様子を観られる映像がYouTubeに上がっていたのに、あれは
どこにいったんだろう?

ともかく、ご自身の劇団運営にうちひしがれて
『二都物語』に接した蜷川さんは、大いに打ちのめされ、
公演後に、唐さんに演出助手にして欲しいと申し出たんだそうです。
それがどこまで本気だったかは当人同士にしかわかりませんが、
それを受けた唐さんは、蜷川さんに芝居を書くことを約束。
結果、『盲導犬』がこの世に生まれることに。

しかもその際、唐さんが執筆を約束した際に言ったのは、
「現代劇がいい? 時代劇がいい?」という問いだったそうです。

こう訊かれた蜷川さんは、さすが作家はカッコイイこと言うなあ
と思ったそうですが、私には、唐さんは唐さんで、ずいぶんと
強く出たものだと思います。ハッタリというか、何というか(笑)

と言うのも、唐さんがそれまでに書いた時代劇は『由比正雪』ただ一本。
しかも、読んでみると、果たしてこれを時代劇と言って良いものか、
という現代劇っぷり。一応、講談の『慶安太平記』でも
お馴染みの丸橋忠弥なんかが出てきて活躍しますが、
確かに着物を来てはいるものの、不思議な出来栄えの芝居です。
(興味があれば、大島渚監督『新宿泥棒日記』を観よ!)

蜷川さんが「時代劇!」と応じた場合はどんな劇になったのか、
大いに気になります。

ちなみに、唐さんはこの他に、後年、ただ一本だけ時代劇を書いています。
実に不思議な時代劇。それはまた別の機会に話しましょう。

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