5/7(木)「耳」の中へ

2020年5月 7日 Posted in 中野note
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↑第六歌だけを抜き出した、こんなマニアックな本もあります。
表紙中央の男がヴェルギリウス......、面白い顔です。

今は早めにハンディラボに着いて、
これから始まるワークショップに備えています。
今日のお題は「耳」。

1幕の終わり、
エリカが死んだ高田三郎三曹に会うためにあの世につながる通路として、
織部の「耳」の穴に突破口を発見するくだりです。

あの世への入り口=「耳」という設定には、
私の推測するところでは原典があり、
それはラテン文学最大の詩人と言われているヴェルギリウスの
叙事詩『アエネーイス』だと考えています。

『イリアス』『オデュッセイア』のホメーロスよりはマイナーですが、
私は妙にこれが好きで、数年に一回は読み直す本です。

この叙事詩の全12歌中、第6歌に有名な「冥界下り」の章があり、
主人公のアエネーアスが海辺の岩場にある洞窟に
分け入っていく様子が描かれます。

何やら怪しげなガスの吹き出す場所にいる「シビュラ」という巫女に
亡くなった父の霊を降ろしてもらって会話するという、
まさに恐山のイタコそっくりの場面が展開します。

ポイントはこの「海辺の岩場の洞窟」で、
唐さんはこれを「耳」に見立てたのではないかと思っています。

何せ、『唐版 風の又三郎』第1幕は、こんなト書きから始まります。

死の花嫁を捜しにどこへ行く、オルフェ。
死の魔窟は......死の耳はどこにある。

読むものをねじ伏せるこの剛腕。
強引すぎる向きもありますが、さすが唐さんです。
「死の花嫁」=高田三郎三曹
「オルフェ」=男装したエリカ
という風にジェンダーがひっくり返っているのもユニークです。

ちなみに、「ヴェルギリウス」の名は1幕のエリカの長ぜりふ中に
しっかりと登場します。

この「耳」の部分、観る人を大いに戸惑わせそうなので、
稽古は丁寧に、本番は勢いを持って臨みたいところです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
と、ここまで書いてワークショップに突入したところ
先週にやった「教授 vs 又三郎+老婆」のおさらいで盛り上がりすぎ、
まったく「耳」に進めませんでした。

来週こそ、「耳」の穴を!

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