2/27(木)唐さんとしなかった会話について

2020年2月28日 Posted in 中野note
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↑テント芝居を覚えた頃に撮った写真です。雨の日でした。

今日はワークショップでした。
その模様は、劇団員のちろさんが明日レポートしてくれます。

私の方は、テント公演の場所探しの際に思い出すことを。

初めて東京にテントを立てようと決意した時、とにかく不安でした。
住んで活動している横浜ならともかく、東京はツテも何もありません。

当時決めていた『お化け煙突物語』という演目を意識して、
足立区〜台東区〜墨田区を徒歩でロケハンして、
いくつも公園や空き地やお寺の境内を見つけるんですが、
どうやってアプローチしたら良いかわからない。

それぞれの事務所を覗いても、
取りつく島の無さは歴然としていました。
当然ながら、世間は「テント演劇をやりたい人」を想定していません。
こっちだって社会と接触した経験に乏しすぎ、気後れしまくっていました。

結局、
唐さんから墨田区にお住まいの画家さんを紹介して頂き、
その画家さんに、知り合いの画廊を紹介して頂き、
その画廊のオーナーさんに、墨田区役所の方を紹介して頂き、
その墨田区の方が、すごく親身になって一緒に動いて下さったので、
私たちはスカイツリーのそびえるあの場所で、
東京テント公演デビューを飾ることができたのです。

これが決定するまでのプロセスはまさしく徒手空拳で、
公演の時期だけ決まっていましたし、後ろに劇団員が控えている手前、
これで決まられなかったどうしよう、とブルブル震えていました。

目端がついた時、もうちょっとで決まりそうな時、決定した時、
唐さんに報告をしましたが、細かな事や苦労は伝えませんでした。
そういう話は、唐さんにするには憚られるように思えたのです。

でも、場所が決まった時に会いに行くと、
「お前も苦労したなあ。オレもそうだった。
若い頃から座長だったから、頭を下げてばっかりだった」
そう、唐さんはポツリとおっしゃっいました。

唐さんに口こぼすのも嫌なので、
私はすぐに芝居や稽古の話に水を向けてしまいましたが、
こういう時の唐さんは理解者として、巨大な安心感があります。

昔、唐さんがお世話になった画商の木村東介さんという方が書いた
『上野界隈』という本には、公演場所探しについて、
唐さんご自身がされた苦労話が出てきます。

あの本の一節には、当時、ずいぶん励まされました。

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