8/25(火)絵画教室にて

2020年8月25日 Posted in 中野note
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↑同じ企画で和歌山県の新宮に行き、あの方の記念館に立ち寄りました。


愛用の笠の話の続きです。

2016年の夏、私は演出助手として、
やなぎみわさんのトレーラー演劇に参加していました。

台湾から取り寄せたデコトラを用いた野外ステージで、
中上健次の『日輪の翼』を舞台化し、上演しようという企画です。
やなぎさんとは、それまでに『パノラマ』公演もご一緒しましたし、
発想の突飛さとスケールの大きさに惹かれました。

そしてまた、「野外」「夏」とくれば「笠」の出番でした。

神奈川芸術劇場のスタジオで行われた稽古を経て、
一行は大阪に乗り込みました。
住吉大社の近く、北加賀屋にある元造船所の倉庫内で、
実際のトレーラーを用いたリハーサルを行うためです。

その際、私は倉庫のすぐ近くにある、
ある絵画教室に宿泊することになったのです。
制作助手の井尻さんという女性の知り合いが、そこを運営していました。

夏ですし、大きなソファをベッドにタオルケットがあれば快適でした。
風呂無しでしたが、近所には早朝から深夜までスーパー銭湯があり、
回数券を買って通いました。贅沢をして朝晩、1日に2回。

朝起きて、事務仕事をし、
横浜にいる時と同じように傘を装着してランニングに出掛けます。
初めての土地なので色々な場所を見て回りました。
それから風呂に行き、遅めの朝食を食べて稽古に向かう日々。

出発する際は、荷物を極限までコンパクトにして出かけます。
午後や夕方には子どもやお年寄りが集まって絵画教室が行われるからです。

後から聴いた話では、教室に通う近所のお婆さんはその荷物を見て、
お遍路さんが住みついたと思ったそうです。
たまたま置いて出掛けた笠を目にして、「あ、お遍路さんだ!」と。

3週間弱を過ごして大阪を後にする日、
私はお遍路さんらしく、墨書風に仕立てた御礼の置き手紙をしました。

まるで、自分が『砂の器』の登場人物になったように思えました。

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