5/18(火)狐につままれる

2021年5月18日 Posted in 中野note

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↑私の住む保土ヶ谷区には謎めいた公園がある。そこの草むら。


またしても、ワークショップで取り組んでいる

『海の牙-黒髪海峡篇』に気になってしまうエピソードがありました。

 

それは、ヒロイン・瀬良皿子(せら さらこ)が、

自らの仕事がうまくいっていないことをこぼすくだり。

彼女はパンマパンパンの按摩つまり娼婦なのですが、

変な客にオーダーされて困っている、そういう話をします。

 

というのも、電話で呼ばれて待ち合わせの場所に行くと、

声はするのに男は姿を現さない。

そして、その声の出元が移動するというのです。

あまりに照れ屋なのか、引っ込み思案なのか、

それとも単にからかわれているのか、そういうことを愚痴こぼす。

 

この場面に来ると、私の胸にあるエピソードが去来します。

またしても、前に唐さんに直接聞いた話。

 

 

唐さんは中学生の頃、好きな女の子がいたそうです。

中学時代の唐さんといえば、いまだ本名の大靍義英(おおつる よしひで)少年、

これぞ内気の最たるもので、口数の少ない内向的な男子だったそうです。

 

それなのに、内に想いを秘めた当の相手から、呼び出しがかかった。

勢い込んで唐さんはその場所、校舎裏の原っぱに駆けつける。

 

「おおつるでございまーす!」

上気した唐さんは、後年、大いなる武器とするテノールで乗り込んだそうです。

が、草ふかいその場所に相手の姿はない。しかし、気配はするそうなのです。

そしてその方向に唐さんが進もうとすると、ササっと何者かが、

草むらから草むらを移動して、何度もトライしたけれどついに追いつかなかった・・・。

 

そう唐さんはおっしゃっていました。

 

・・・・・・。

どこまでが現実か分からない話ですが、唐さんの目は真剣でした。

「あれはキツネの仕業だったのではないか」とも。

 

完全に妄想か、現実だったとしても同級生にからかわれたのではないか、

私にはそんな考えもよぎりましたが、唐さんの夢を壊すようで、

それはついに言い出せませんでした。


だから、きっと瀬良皿子のあのせりふは、作者の実体験なのです。


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