4/18(火)兵2の衝撃
↑唐ゼミ☆2010年公演より。右が重村大介この時も兵2は彼のもの
(写真は伏見行介)
日曜に読んだ『愛の乞食』二幕一場について、
私たち唐ゼミ☆劇団員が素通りできないエピソードがあります。
それは、今は唐組で頑張っている元団員の重村大介について。
彼が横浜国大に入学してきた時、周囲は一様に驚きました。
よく「オレって人とは違うんだよね」とか、「いや、オレこそが」などと
自意識過剰な青年世代は個性的であることを競う合う風潮があります。
が、重村こそはダントツの、飛び抜けて変わり者でした。
あの喋り方、オドオドとして、その実けっこう自信満々な物腰。
4年間の浪人生活を終えて大学生となった彼は、
当時、皆に「ヨン様」と呼ばれていました。
そして、彼が大学の講座で『愛の乞食』により初舞台を踏んだ時、
それを観た学生たちは度肝を抜かれました。
・・・とにかく、何を言っているのかよくわからない。
決して唐さんのせりふが難解だからではなく、
重村のあの喋り方によって、日本語がまったく聞き取れない。
彼は顔を真っ赤にして目をつぶり、大音声で叫び続けました。
初めて登場したのはガードマンの役、長ぜりふは散々でしたが
しかし、一人二役を兼ねて2回目に登場した時、奇跡が起きました。
「兵2」です。兵2が登場するのは兵1に次いで二番目。
兵1がしたやり取り、言ったせりふを兵2もそっくり繰り返してやる、
そういう仕掛けのシーンで、重村は爆発しました。
どんな筋立て、やり取りかはあらかじめ兵1がやってくれているので、
観客は事前に何が行われるかを知ることができました。
その上で兵2に扮した重村は、他の誰にも真似できない行き方を突き進む。
例えば、「キャラメルはありません」という何でもないせりふ。
重村にかかると「ぎゃらべりばせん!」という叫びに変化しました。
重村がひとこと発する度に、狭い研究室に詰め込まれた30人が湧き、
部屋が揺れました。思えば、あの時の演出は唐さんの跡を継いで
大学に来てくださった久保井さん。
・・・あの頃に比べると、重村のせりふはずいぶん分かりやすくなりました。
少し寂しいような気もしますが、あの時は同じやり取りを繰り返す
兵2だからこそ威力を持ったのです。
『透明人間』での素晴らしいせりふ回しに期待しましょう。
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