11/10(水)会えなかった人

2021年11月11日 Posted in 中野note
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↑映画『新宿泥棒日記』の中、『アリババ』の劇中歌を弾き語る唐さん。

『ジョン・シルバー』や『アリババ』を初演した頃の唐さんは、
野心に燃えていました。

以前にこのゼミログに書いたこともありますが、
例えば、当時、気鋭の映画監督として問題作を連発していた大島渚監督に
接近するために、監督が現れるというゴールデン街のお店で待ち受け、
友人・足立正生さんとわざと大ゲンカを演じて見せて、
その目にとまろうとしたそうです。

果たして、『新宿泥棒日記』が成るわけですから、
この目論見は成功しました。あの映画の中には唐さんがギターの
弾き語りをする場面がありますが、あれは『アリババ』の劇中歌。

そんな唐さんにも、会いたいけれど会えなかった、
あと少しというところで接触の予感がありながら、
ついに仕留めきれなかった人物がいます。
三島由紀夫さん。

唐さんとしては会いたかったらしいのです。
親交のあった澁澤龍彦さんや土方巽さんらが三島さんと
親しかったこともあり、会える予感が充分あったそうなのです。
けれど、会えなかった。

唐さんの感触では、状況劇場の芝居の情報は三島さんに届いていて、
『ジョン・シルバー』『アリババ』というタイトルに、
三島さんが大いに関心を持っていたと、先のお二人から伺ったそうです。
もう少しで会えるところだった。私はそう唐さんから教わりました。

そういえば、三島さんの初期戯曲『愛の不安』という台本は
『アリババ』にそっくりな物語です。
若い男女がいて、彼らが海辺の倉庫にしけこんでいると、
将来に彼らが堕胎することになる子どもが船員服を着て現れ、
恨み言を言います。発表は1949年。面白い一致です。

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