3/1(月)オレたちの『白い巨塔』

2021年3月 1日 Posted in 中野note
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(2003年6月『少女都市からの呼び声』を上演したときの紅テント)

3月ですね。あっという間に年度末です。
いつも年度末は追い込まれてばかりで時間があっという間に過ぎる印象です。

新しい月が始まると、第一月曜日の朝には若葉町ウォーフで
テツヤ(プロデューサー・舞台監督の岡島哲也さん)と二人で番組を
配信するのが習慣です。もう半年もやっている。
【youtube】テツヤとアツシの朝から呑んじゃってる?vol.7

その中で、ひょんなことから、中村伸郎さんの話になりました。
文学座出身の名優です。三島由紀夫さんと同時代的に劇をつくる中で、
三島さんの書いた『喜びの琴』上演の可否をめぐり文学座を脱退、
後年、渋谷のジャンジャンで毎週金曜の夜に上演し続けた
イヨネスコの『授業』はつとに有名です。
私は音声で聴いたことがあります。

私が中村さんを知ったのは、『白い巨塔』と『タンポポ』を観たからで、
あの独特の声で、名門医大教授と東北大学教授を騙る詐欺師を演じていました。
晩年の如月小春さんが書いた評伝を読み、中村さんの物真似を
今だにやられている坂本頼光さんも面白く追いかけています。

ところで、同じ『白い巨塔』でも、
2003年にリメイクされた唐沢寿明さんのバージョンでは、
病棟をエレベーターで移動する教授を、助教授以下
研究室の門弟たちが階段を駆け上がる姿が印象的でした。

彼らは勢いよく階段を上り、息が上がるのをおさえて
エレベーターの扉の前に整列する。すると扉が開いて教授が現れる。
現在であればコンプライアンス上、確実に批判される人間関係です。

しかし、それに似たようなことを、私たち唐十郎ゼミナールもまた
遊びでやっていたことを思い出した。

唐十郎研究室は、唐さんの趣味に合わせて絨毯敷きでした。
靴を脱いで研究室に入った唐さんは座椅子に腰掛け、
地区センターの畳敷きの集会室にあるような低い長机で
お茶を飲んだり、お弁当をされたりしていました。
お気に入りと座椅子とお気に入りの茶碗。
高価な品を求めるわけではありませんが、モノに愛着するのが唐さんです。

私たちの公演直前、ゼミナールの時間ともなれば、
そこから講義棟の裏手に立てたテントに移動して、通し稽古を観ます。
テントの中は、もちろん桟敷席。

そこで私たちは、座椅子を移動することにしました。
私は唐さんを案内して一緒にエレベーターに乗る。
すると仲間の一人が、座椅子を担いで階段を駆けおり、
テントに到着する頃にはそれがセットされていました。

別に唐さんに「そうせよ」と言われたわけではありませんが、
通し稽古を前に緊張する唐さんのオーラには、そうさせる迫力が
ありました。と同時に、私たちの中には、どこかに遊び心もありました。

公演に向けて私たちは緊張し、唐さんも緊張していました。
きっと唐さんは、同じ座椅子であることなど、気付きもしなかったと思います笑

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