10/22(金)カーテンコール〜林麻子・渡辺宏明
2021年10月22日 Posted in 中野note
今日はKAATの仕事で久々に秦野市に行きました。
『実朝出帆』を上演した東田原の広場にも少し寄り、お参りしてきました。
今は、海老名のサービスエリアでこれを書いています。
本日のカーテンコールはこの二人。
劇団員の林麻子と渡辺宏明くん、いきましょう!
☆林麻子(はやし あさこ)
劇団員の林麻子です。
アサコは今回の延長戦にあたり、完全にコメディエンヌ開眼しました。
それも、私の指示や指導によるのではなく、
彼女独自の研究によってこの道を切り開いてみせた。
これは演出としても、劇団主催者としてとても嬉しいことでした。
とにかく、彼女の演じたスケバンの「梅子」は、
ちょっとした所作やせりふが、どこか可笑しい。
しかも、いかにもコミカルというやり方を彼女はしない。
あくまで唐ゼミ☆劇団員らしく、台本の設定に立ちながら、
せりふを活かして可笑しみに持っていく。
それでいて、鳳さんの演じた姉貴分の「桃子」にすがる時
行き場も展望もないスケバンの寂しさが伝わってくる。
可笑しくて、とても可哀想。
梅子は、男たちに傷つけられ、桃子にも捨てられる役です。
その度になげき、悲嘆の声をあげる。
その声の音程がこちらの要求通りいつもピタリとくるので、
「ああ、アサコはピアノ科なのだ」といつも実感します。
また、必死にギリギリ演じるところと、
商業演劇的に、余裕を持って自分の状態を表しながら伝えるところと、
そのあたりの見せ方、切り分けのバランスも心得てきた。
そろそろガチンコの、悲壮かつ二枚目な役どころに挑ませ、
観る人の激情に訴え、人間の真に迫る役柄をやるべき時と考えています。
衣裳と三腐人の歌の振り付けも彼女の仕事。
歌詞と役者の個性を活かそうとする振り付け。
他人の衣裳にも自らのプライドを賭け、
本番前日にも睡眠時間を削ってズボンの裾上げを続ける。
なかなかのセンスと体力。
2012年にシアターコクーンで上演された『下谷万年町物語』を観て、
翌年の唐ゼミ☆『夜叉綺想』に飛び込んできたアサコ。
久々の花やしきが彼女にはどう見えていたのか、
今度、聞いてみたいところです。
2014年に新宿中央公園で上演した望月六郎作『君の罠』以来です。
渡辺くんは、Bobjack Theaterのメンバーで、
唐ゼミ☆常連の丸山正吾くんもこの劇団に所属しています。
それがご縁で、前回も参加してくれた。
5年以上を隔てて再会したことにより、自分は
日々の積み重ねが人間の基礎的な能力そのものを向上させるのだと
思い知りました。とにかく、声がデカくなっている。
こんなに基本的なパワーアップを果たすなんて。驚きました。
渡辺くんの演じた「大学生」は、軍人家系の末弟という設定です。
だから、戦後に何年経とうが、常に学ランを着て竹やりを持ち、
空腹の限界に挑戦し続けている。
本来はジャガイモのような坊主頭の青年が演じるべきところですが、
渡辺くんの「大学生」にはどこか色気があって、それが面白かった。
それでいて、急激に燃焼して儚く消えるような青春の痛ましさが
ありました。健気で、だけど、絶対に幸せになれそうにない感じ。
他にも、『唐版 風の又三郎』における渡辺くんの献身はものすごく、
出番の少ない2・3幕に多くの役割を買って出てくれました。
ある時は航空兵、ある時は佐々木あかりに連れられた甦る死体、
他にも、往来をいくホスト風の男、自衛官の一人もやってくれ、
どこでも声を張り続けてくれた。あらゆる場面に登場しては、
ダレそうになる舞台進行のテンポアップに貢献。
テントの内外をウロウロしながら劇の進行にヤキモキする自分を
いつも安心させてくれました。
丸山正吾が演じる「夜の男」に連れられ、「犬」となって現れる終幕。
あれだけの暴力性を丸山正吾から引き出したのは、
渡辺くんのフィジカルと二人の信頼関係に他なりません。
フィジカルの強い役者が好きで、しかもせっかちな自分の好みを
よく体現してくれました。「年齢とともに体力が落ちてきています」
そう渡辺くんは終演後の楽屋で言っていたけれど、そんなことはない。
一度に解放するエネルギーの量が格段に増えたからだと、
こちらはにらんでいます。
初めて唐さんの芝居に、しかも『唐版 風の又三郎』に出てもらえて
ほんとうに良かった。
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