11/3(祝水)洗面器は苦手
2021年11月 4日 Posted in 中野note
『下谷万年町物語』一幕より三人のオカマ。尻からサフランが咲く。
唐さんの作品を上演していると、そう言われることがあります。
自分としては、唐さんには品があり、作品もまたキレイだと思うのですが、
例えば、『下谷万年町物語』を上演している時にそう言われました。
あの芝居、私にとってはキレイの塊みたいに感じる。
上野や浅草への懐かしさに溢れていて、何より、
物語を通して出会う仲間たちと劇や劇団をつくろうとして立ち行かない、
その有り様に、強烈に青春の希望と挫折を感じさせる。
誰にもよくある話。
そして、全体にセピア色で、胸が痛くて、甘やかな話。
けれど、観る人によっては劇の冒頭に出てくる場面で、もうアレルギー。
舞台全面に設られた池から三人のオカマが尻を突き出す。
その突き出された尻には、ご丁寧に一本一本サフランが突き刺さっている。
これだけでもうダメ。
この芝居に取り組んでいた時、実家通いの出演者に
「親御さんは観にきたの?」と訊くと、言いづらそうに
「母はきたのですが、一幕で帰りました」と。
どうも、冒頭の尻とサフランが受け容れがたく、お帰りになったらしい。
それは、ごめんなさい。面白い芝居を懸命にやっている。
劇を見て役者業の味方になってもらいたかったけれど、
どうやら逆効果だったらしい。
こんなことを思い出したのは、
目下研究中の『アリババ』のワンシーンの影響。
唐十郎フリークの私にも、どうしても受け容れられない場面
と云うのが、ないわけではない。
それは、洗面器に入った液体を飲む、という場面。
『アリババ』の序盤にはそんな場面があって、
貧乏な若夫婦のもとに謎めいた老人がやってきて、
背中に背負った赤ん坊をアピールする。
ふと気づけば、老人の姿はなく、残されているのは洗面器ばかり。
しかも、その中には赤い水が並々とあり。
「赤ん坊のオシッコかな。かいでごらん」と旦那が妻いに言う。
けれど、妻は「甘いにおいがする」と言って、一息にこれを
飲んでしまう・・・
これですね。サフラン尻にはゲラゲラ笑いの私ですが、
かなり抵抗を感じる。なんだかバッチイなあ。
そう思って、どこか怖気がする。
そういえば、私が初めて観た紅テント、
初めて観た唐さんの芝居は1999年春公演の唐組『眠り草』ですが、
あの中にも一幕に洗面器の水をが出てきた。
しかも、主人公の青年が手を洗ったその水を、
ヒロインが飲み干してしまう、という場面。
稲荷卓央さん、飯塚燈子さんが演じた光景を私はまざまざと
覚えていて、やっぱり、すごい抵抗感だったことも、
『アリババ』読みながらまざまざと思い出しました。
すみません、唐さん。
かなりかなり共感して追いかけているのですが、
これだけは克服できていません。風呂に入ると、ビクリとします。
トラックバック (0)
- トラックバックURL:
コメントする
(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)