6/15(木)四方田犬彦さんの新刊

2023年6月15日 Posted in 中野note
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↑目下、これをゴロゴロしながら読んでいます

ずっと四方田犬彦さんの本を読んできました。

『叙事詩の権能』という、ともすれば時代錯誤に
巨大な物語を四方田さんが語ったものが
特に好んで何度も手に取る本です。
加えて、軽く書いたエッセイも好きです。

『けだものと私』『黄犬本』『赤犬本』なんかを
笑い転げながら読み、『月島物語』の影響から初めてレバカツを食べ、
その美味しさに開眼したりもしてきました。

聞くところによれば、四方田さんはご自分ですっぽんすら
料理できるらしい。恐るべき腕前です。

最近は『人、中年に至る』の続編『いまだ人生を語らず』が
出ていることに気づき、早速に書店で求めました。

四方田さんがフリーハンドで書いたエッセイは読みやすく、
調べ物をしながら書いた情報量よりも、かえって地下水脈の
ような知を感じさせて、味わいがあります。
日々これを読み、数日後には惜しみながら読了してしまう
だろうことが読み始めてすぐに予測できる書き出しです。
先ほどあげた『人、中年に至る』と『先生とわたし』は
特にそんな風にして毎日を愉しみに読んできました。

ところで、四方田さんは我が師・唐十郎にはなかなか
辛い点をつけています。自家撞着に陥っている、という
批判の文章を読んだことがあります。
一方で、寺山修司には評価を与えています。

それ自体は残念なことですが、噂では、
『佐川君からの手紙』の取材のとき、唐さんがサンテ刑務所を
訪ねるために骨を折ったのが四方田さんだと聞いたことがあります。

だとすれば、四方田さんが唐さんを支持しないのも頷けます。
なにせ、唐さんはそういった裏の根回しをふいにして、
佐川一政さんに会わずに帰国してしまったのですから。

これは、あくまで私が人から聞いた話であり、
真偽のほどは確かではありません。

それに、四方田さんほどの人が作品や作家を評する時に
私情をまじえるとも思えません。
が、ひょっとして、万分の一でも
唐さんに実際的な迷惑をこうむったことが氏の唐十郎評価に
影響しているとしたら、それはそれで大いに人間味のある話だと、
私はかえって共感を覚えます。

まあ、私自身は唐さんからそれほどの被害に遭うどころか、
ひたすら大きな滋養を得てきましたし、
時に唐さんに振り回されたとしても面白がってお付き合いしてきました。
惚れた弱みというやつかも知れませんが。

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