12/21(月)祠(ほこら)の時間⑩

2020年12月21日 Posted in 中野note
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↑「〜溶ける角」というサブタイトルの通り、
ラストシーンには氷でできた角を付けた自転車が登場する。


唐十郎ゼミナールがスタートして数年が立った頃、
執筆中の唐さんから、よく電話がかかってくるようになりました。
今、書いているトピックについて調べものをして欲しい。
そういう依頼でした。

こういう時は即座に
すべての予定を繰り合わせてこれに応えます。
せっかくインスピレーションにかられている唐さんの
霊感が逃げてしまっては、弟子として最悪です。

せっかちな私には、さらにせっかちな唐さんの気持ちがよく分かります。
何より、電話口からは着想にかられた唐さんの興奮が伝わってくる。
急がなければ!

すぐに書籍に当たり、あるいはネットサーフィンをして、
コピーやプリントアウトをファックスする。

こうした作業は、いつもスリルに充ちて、
唐さんの創作に関わっているといううれしさも手伝って充実したものでした。
中でも特に面白かったのは、、唐さんが私たちのために
『ユニコン物語 台東区篇』を書き換えて下さった時のことでした。

そうです。私のみならず、唐ゼミ☆劇団員にとって
最も思い出深い唐さんの執筆作業は書下ろし作品『木馬の鼻』に
違いありませんが、その前、2006年の夏に、
私たちは『ユニコン〜』を改訂してもらっていたのです。

この作品は、新生児が看護婦によって交換されてしまう出来事、
いわゆる「嬰児取り替え事件」が重大なモチーフになっていますが、
当の赤ん坊だった二人を結びつけるカギこそ、
彼らの血液型、日本人にとって最もレアなAB型のRHマイナス、
だったのです。

当時、これがいかにレアな血液型であるかついて、
唐さんは私に尋ねられました。
初めて自分たちが上演するための調べものでしたから、
嬉々として、2万人に1人という数字をお伝えしました。

唐さんとしては、もっともっと希少であって欲しかったという
反応でしたが、「まあ、いいか」と書き進めて頂き、
『ユニコン物語 溶ける角篇』が生まれました。

そうそう。私たちが上演したバージョンには、
当時、封切られたばかりで唐さんと私がお互いに観ていた
映画『ナルニア国物語』のエピソードも盛り込まれています。


・・・このシリーズ、
今日で10回目なので、一区切りつけようと思います。
第一期として、今回はこれくらいで。
続きはいずれ、第二期としてお話ししましょう!

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