4/21(金)オルガンと唐十郎②

2023年4月21日 Posted in 中野note
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『煉夢術』と小説版『ガラスの使徒』。それぞれ単行本になっています

今日は、昨日書いた演奏会の本番でした。
オルガン・プロムナード・コンサートというのはいつも
昼間のランチタイムに行っているから、今回のも12:10開演。
私のようなテント者、芝居者にはなかなか不慣れな時間だと
思いながら本番にあたりました。

400回記念ということで豪華メンバーによる出演でした。
なにしろ、4人のうちの3人が日本オルガニスト協会の会長経験者
(1人は現役の方)であり、一人は若手のホープである県民ホールの
アドバイザーなので、これで入場料500円とは大盤振る舞いでした。

曲の違いもさることながら演奏家によって鳴り方が違うものだと
聴き比べながら舞台裏で過ごすことができたことが贅沢でした。


ところで、昨日はオルガンと唐さんの関わりについて、
『煉夢術-白夜の修辞学或は難破船の舵をどうするか-』を紹介しました。
が、もう一本、大事な作品があるのを忘れていました。

それは、2005年に封切られた映画『ガラスの使徒(つかい)』です。
唐さんがシナリオと主演を行い、金守珍さんが監督した作品です。

あの映画では、巨大な望遠鏡を作るための"レンズ"が重要な役割を
果たします。唐さんはレンズ職人に扮し、主人公サイドの
経済的ピンチを救うために、とびきりのレンズを研磨します。
しかし、そのレンズ磨きには特殊な砂が必要でした。

その砂は、今はダムの底に沈んだ小学校の校庭にだけあり、
ヒロインはそれを取りに行きます。そして、小学校の校舎に、
同じく水底に沈んだオルガンを発見する。水中でオルガンを弾くと、
一音一音が大きな気泡となり、遥か上方の湖面を目指して
踊るように舞い上がっていく、というシーンが描かれます。

いわば、主人公たちが絶体絶命の危機を乗り越えるための
反撃の狼煙を歌い上げるのが、湖底のオルガンの役割でした。

面白いことに、この水底のオルガンのイメージは、
65年に書かれた『煉夢術』にすでに現れています。
あの劇にも、海底からオルガンの音が
空気の塊となって浮上していく、というせりふがある。

20代の頃に得た着想が40年を経ても揺るがない。
唐さんの自らのアイディアに対するこだわりを、オルガンが登場する
二つの作品を通じて味わうことができます。


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